研究課題/領域番号 |
17K17068
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
和田 剛 東邦大学, 医学部, 客員講師 (70648170)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心静止 / 心肺蘇生法 / 伸展活性化チャネル / パーカッションペーシング / マイクロミニピッグ / Mechanophysiology |
研究実績の概要 |
パーカッションペーシングは、心静止時に胸壁に物理的な衝撃を与えることによって心室の自発的収縮を誘発させる心肺蘇生法で、胸骨圧迫法と同様に有効な体血圧を誘発すると報告されているが、現在のAHAガイドラインにおける心肺蘇生法として推奨されていない。一方で、我々はパーカッションペーシングによる心静止や症候性徐脈患者に対する治療効果は電気的ペーシングに匹敵し、伸展活性化チャネルの開口がその心室電気活動の誘発に寄与することを見出した。徐脈性不整脈に対する経皮的ペーシングや電気的ペーシングの有効性は確立されているが、しばしば救急医療の現場においてすぐに治療開始することが困難な場合がある。パーカッションペーシングは簡便ですぐに開始できる心肺蘇生法の一つであり、この問題点を克服しうると考えられる。
本年度は、平成29年度から引き続き、パーカッションペーシングのハロセン麻酔マイクロミニピッグにおけるベプリジルで誘発した洞徐脈モデルに対する安全性を評価した。その結果、ベプリジルで誘発したQT延長症候群においてもパーカッションペーシングの催不整脈作用は確認できなかったことが明らかになった。これらの結果は、徐脈性不整脈患者に対してパーカッションペーシングは有効な血圧と心拍出量を誘発したというletter to the editorに対して、当該実験データを一部含むauthor’s replyを発表した。さらに、平成29年度の予備実験で行った左前下行枝を虚血再灌流することで誘発した心室細動犬モデルにおける心肺蘇生に対するβ遮断薬の影響を学会発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験動物数を削減するために、パーカッションペーシングを心肺蘇生法として利用するための条件の明確化を中心に解析を進めた。 パーカッションペーシングのハロセン麻酔マイクロミニピッグにおけるベプリジルで誘発した洞徐脈モデルに対する安全性を評価した。治療用量に相当する0.3 mg/kgのベプリジル経静脈的投与下で、パーカッションペーシングはマイニクミニピッグ心静止モデルと同様に誘発電気活動とそれに起因する左室内圧を上昇させた。一方で、QT延長を誘発する3 mg/kgのベプリジル経静脈的投与下で、QRS直後のパーカッションペーシングはパーカッションアーチファクトと左室内圧の上昇を認めたが、誘発電気活動を認めなかった。さらに、R on T現象を誘発するために行ったパーカッションペーシングは、心臓振盪のような致死性不整脈を引き起こさなかった。以上より、少なくとも薬剤誘発性QT延長症候群においてもパーカッションペーシングの催不整脈作用は確認できなかったことが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成31年においては、これまでに完了した本研究成果を論文投稿する。また、誘発電気活動の機序を解明するために、今年度評価できなかった候補化合物投与下での体血圧および心室電気活動の誘発率への影響を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも2571円の残額が発生した。来年度はマイクロミニピッグ心静止モデルと洞徐脈モデルを作成のための実験動物やそのモデルに投与する試薬の購入、学会発表のための参加費および論文投稿時の校正費用および投稿費用に使用する予定である。
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