パーカッションペーシングは胸壁の物理的刺激により心臓の自発的な拍動を誘発する心肺蘇生法だが、その詳細な機序は不明のために現在推奨されていない。研究者は、マイクロミニピッグ心静止モデルに対して胸骨圧迫法、パーカッションペーシングおよび電気的ペーシング法で誘発された心血管系に対する影響を評価し、パーカッションペーシングの有効性の証明と機序の解明を目的とした。パーカッションペーシングで誘発した収縮期および拡張期血圧は胸骨圧迫法および電気的ペーシング法によるそれらに匹敵し、伸展活性化チャネルの開口がその心室電気活動の誘発に寄与することを解明した。さらに、パーカッションペーシングは心臓振盪を誘発する可能性が報告されているため、ハロセン麻酔マイクロミニピッグに治療用量に相当する0.3 mg/kgとQT延長を誘発する3 mg/kgのベプリジルを累積的に経静脈的に投与しパーカッションペーシングの心血行動態に対する影響を評価した。パーカッションペーシングは洞徐脈において有効な体血圧を誘発し、薬剤誘発性QT延長症候群において心臓振盪のような致死性不整脈を引き起こさなかったことが明らかになった。これらの結果は、パーカッションペーシングが症候性徐脈性不整脈に対する機械的ペーシングによる治療を開始できるまでの橋渡しとなる治療法となることを期待させ、mechanophysiologyにおける重要な知見を与えるものである。パーカッションペーシングを臨床の現場で活用するためには、さらなる詳細な機序や有効な条件の解明が必要である。 さらに、予備実験で行った左前下行枝を虚血再灌流することで誘発した心室細動犬モデルにおける心肺蘇生成功率に対するβ遮断薬の影響について学会発表を行い、現在論文投稿中である。
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