研究課題
Neutrophil Extracellular Traps (NETs)は生体防御において重要な役割を果たす。一方で、過剰なNETs形成は血栓形成や血管内皮細胞傷害の原因になるといわれている。微小血管内での血栓形成による循環障害は、臓器障害の主な原因の1つとして重要視されており、近年敗血症の病態悪化にNETsの関与が注目されている。Thrombomodulin(TM)は血管内皮細胞上に存在し、その役割には抗凝固作用と血管内皮細胞保護作用がある。我々は、TMがNETs形成を抑制することで、敗血症時の臓器障害を防ぎ、生存率を改善できるかもしれないと仮説をたてた。これを検証するために、敗血症モデルマウスでTMによる生存率と各種臓器(肺・肝臓)内のNETs形成、血中のサイトカイン濃度を調べた。マウスに LPSを投与し、72時間生存率が50%となる敗血症モデルマウスを確立した。このモデルに、LPS投与後、リコンビナントトロンボモジュリン(rTM)を投与した。肺と肝臓のNETsを抗MPO抗体と抗ヒストン抗体で免疫蛍光染色し、共焦点蛍光顕微鏡にて観察した。さらにNETsの網目構造を確認するために、走査電子顕微鏡にて観察した。血中サイトカイン濃度はCytometric Bead Array (CBA)で測定した。rTMを投与した群は敗血症モデルマウスの72時間後の生存率を100%に改善した。このモデルにおいて、肺と肝臓でのNETs形成と血中サイトカインの濃度上昇を確認した。このモデルにrTMを投与すると、臓器内のNETs形成を防ぎ、サイトカイン濃度の上昇は抑制された。TMが臓器内でのNETs形成を抑制したことにより、immunothrombosisの拡大を防ぎ、組織障害と微小血管閉塞を防ぐことで、炎症を抑え、生存率が改善された可能性が示唆された。
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