研究課題/領域番号 |
17K17077
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
三宅 伸完 産業医科大学, 大学病院, 助教 (10644023)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ダイナミン / エンドサイトーシス / 好中球 / ROS / TLR4 |
研究実績の概要 |
粒子状物質の生体影響について、炎症の初期段階で重要な役割を果たす好中球への影響解明を目的として研究を実施した。チオグリコレート誘導腹腔滲出細胞をフローサイトメトリーにより解析し、大多数が好中球であることを確認し、本研究ではこの細胞を好中球として使用した。好中球を蛍光シリカ粒子と共に培養後、Cy5.5共役抗CD11b抗体で標識し蛍光顕微鏡で貪食を観察した。蛍光シリカ粒子と好中球を培養した所、確かに粒子がエンドサイトーシスされる様子が共焦点レーザー顕微鏡で観察された。粒径の違うシリカ粒子(0.1、0.3、1、3、10 μm)で好中球と培養し、フローサイトメトリーで解析した所、1 μmの粒子が最もエンドサイトーシスされることが示された。この取り込みは4℃の環境下で抑制されることからも、粒子がエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれていることが示唆された。次にどのように粒子がエンドサイトーシスされるかを調べるために、阻害剤を用いた実験を行った。標的としてエンドサイトーシスの初期のイベントに重要である、ダイナミンとクラスリンに着目した。ダイナミンのPHドメイン阻害剤はエンドサイトーシスを抑制するが、ダイナミンのGTPase阻害剤およびクラスリン阻害剤の効果は認められなかった。また興味深いことに、これまでに申請者らの研究室で報告してきたことと一致するように、toll様受容体4(TLR4)ノックアウト(KO)マウス、MyD88 KOマウス由来の好中球では、粒子のエンドサイトーシスが減少していたため細胞表面のTLR4のエンドサイトーシスにおける重要性が示唆された。以上より、活性化した或いは炎症部位に浸潤した好中球は、粒子誘導性炎症事象の鍵となる細胞であり、ダイナミンのPHドメインを介したエンドサイトーシスにより炎症が引き起こされることが示唆された
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
好中球の調整については雌のBALB/cマウス、および各種KOマウス(TLR2-KO、TLR4-KO、TLR9KO、MyD88-KO)の腹腔内に4%チオグリコレート2mlを注射し、4時間後に腹腔内洗浄液を採取した。遠心して得られた細胞から細胞懸濁液を作成する手技を習得した。得られた細胞をα-CD4/violet, CD11b/cy5.5, Gr1/FITC, F4/80/PEの4種の蛍光抗体で染色し、フローサイトメトリーにより解析し、大多数が好中球であることを確認した。以降の研究ではチオグリコレート誘導腹腔滲出細胞を好中球として使用した。細胞培養上清・細胞溶解液の調整について、好中球を粒径の異なる蛍光シリカ粒子による刺激を行い、4時間後に細胞上清を回収し、細胞はRIPAバッファーを加えて細胞溶解液を作成した。 解析について、好中球は蛍光シリカ粒子と共に培養後、Cy5.5共役抗CD11b抗体で標識し蛍光顕微鏡で貪食を観察した。フローサイトメトリーで蛍光シリカ粒子の粒径、マウスによるエンドサイトーシスの相違を解析した。好中球による蛍光シリカ粒子のエンドサイトーシスを観察したので、次にどのように粒子がエンドサイトーシスされるかを調べるために、阻害剤を用いた実験を行った。標的としてエンドサイトーシスの初期のイベントに重要である、ダイナミンとクラスリンに着目し、フローサイトメトリーによる解析を行った。 以上の通り当初の予定と比較しておおむね順調に研究は進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
細胞表面のtoll様受容体4(TLR4)のエンドサイトーシスにおける重要性が示唆されたことより、TLRと同じく、NF-κBを活性化するTNF-αによる刺激に着目し、解析を行う。粒子状物質を投与するとエンドサイトーシスが生じ、ROSが産生されることは知られており、それにより酸化ストレスマーカーのHO-1が増強することが知られている。今回の実験系への酸化ストレスの関与について解析を行う。これまで腹腔滲出細胞を炎症誘導性好中球として使用してきたが、実際に蛍光シリカ粒子を気管内投与し、気管支肺胞浸潤細胞を回収し好中球による蛍光シリカ粒子のエンドサイトーシスを蛍光顕微鏡・共焦点顕微鏡で観察する。エンドサイトーシスによる炎症性サイトカイン産生能をELISA 法により評価する。タンパクの検出は酸化ストレス関連分子(HO-1、p62)の量的変化をウエスタンブロット法で解析する。これまでに用いてきた腹腔滲出好中球と骨髄や脾臓由来の好中球で、エンドサイトーシスの効率をフローサイトメトリー分析で比較する。 粒子状物質をマウスに気管内投与し、肺炎像を観察する。初年度に得られた解析内容とあわせてネトーシスの有無と肺炎への関与の解析を行う。 今回は炎症気管内投与の回数・量は単回投与、100 μgに設定しているが、頻回投与によるサブクロニックなシステムでの解析も平成30年度後半では行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外輸入試料の価格変更などに伴い計画に変更が生じた。次年度はその繰り越し金を違うタイプのモノクローナル抗体購入に使用する予定。
|