本研究課題では、粒子状物質の粒子径の相違が好中球のエンドサイトーシスや活性酸素種の産生にどのように影響するかを解明した。また蛍光シリカ粒子の気管内投与においては、CD11b陽性BAL細胞で粒子のエンドサイトーシスが蛍光顕微鏡で観察された。粒径の違うシリカ粒子で好中球を刺激後、フローサイトメトリーで解析した所、1 μmの粒子が最もCD11b陽性細胞にエンドサイトーシスされることが示された。このエンドサイトーシスは4℃の環境下では抑制された。ダイナミンのPHドメイン阻害剤はエンドサイトーシスを抑制するが、ダイナミンのGTPase阻害剤およびクラスリン阻害剤の効果は認められなかった。TLR4KOマウス、MyD88 KOマウス由来の好中球では粒子のエンドサイトーシスが減少した。NF-κBを活性化するTNF-αによる前処理はエンドサイトーシスを若干増強させ、IKK阻害剤存在下では有意にエンドサイトーシスを抑制した。またエンドサイトーシスの際、TLRの発現は減弱した。エンドサイトーシスにより酸化ストレスが誘発されたが、TLR4 KOマウスでは減弱していた。抗酸化剤NACの存在下ではエンドサイトーシスは促進された。またROSの産生はダイナミン阻害剤により減弱した。酸化ストレス反応のマーカーであるHO-1、p62の発現量はエンドサイトーシスにより増強され、ダイナミン阻害剤で減弱した。しかしながら、TLR4 KOマウスではHO-1発現の増強は認められなかった。好中球はエンドサイトーシスによりIL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインを産生した。これらの産生もダイナミン阻害剤で抑制された。以上より、活性化した或いは炎症部位に浸潤した好中球は、PM誘導性炎症事象の鍵となる細胞であり、ダイナミンのPHドメインを介したエンドサイトーシスにより酸化ストレスを含む炎症が引き起こされることがわかった。
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