研究実績の概要 |
腎臓におけるリン代謝調節に寄与するFGF23/αklothoシグナルは、骨基質石灰化や異所性石灰化誘導に寄与すると考えられる。研究者代表者は、先行研究として、αklotho遺伝子変異マウスやαklotho遺伝子欠損マウスにおける骨・血管石灰化のメカニズム解明に取り組んできた。本研究では、骨・血管石灰化におけるFGF23/klothoの寄与についてさらなる検討を行うため、Fgf23遺伝子欠損マウスの骨基質石灰化異常の組織化学・微細構造解析を行った。 2018年度に着手した組織学・微細構造学的解析および遺伝子解析から、Fgf23遺伝子欠損マウスの大腿骨・脛骨では、野生型マウス同様に、活性型骨芽細胞が認められ、基質小胞性石灰化が誘導されているもののその後の石灰化球形成が抑制されており、広い範囲で未石灰化骨基質が局在することが明らかとされた。さらに、骨基質内部に埋め込まれた骨細胞では、DMP1、osteopontin蛋白の過剰産生が認められるとともに、DMP1, osteopontin, MEPEなどSIBLING Familyの遺伝子発現の上昇が観察された。また、これらの骨細胞には異常な石灰化沈着が認められ、骨細胞の機能異常および骨細胞性ネットワークの破綻が推測された。正常状態において、規則的な骨細胞ネットワークは周囲の骨基質ミネラルの維持に関与することから、FGF23遺伝子欠損マウスでは、骨細胞による骨基質ミネラル維持が推測される。 以上のことから、FGF23欠損状態では、骨芽細胞ならびに骨細胞の機能異常が生じ、骨芽細胞による基質小胞性石灰化の異常と、骨細胞による基質ミネラル維持不全による骨基質石灰化異常が誘導されると考えられた。
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