生後5週齢の野生型マウスおよびOpn遺伝子欠損(KO)マウスの上顎第一臼歯に溝状の窩洞を形成した。術後1~7日後に固定した後、脱灰後パラフィン切片を作製し、抗Nestin、抗DSP、抗DMP1免疫組織化学、Dmp1のin situハイブリダイゼーションを行った。同マウスの上顎第一臼歯を抜去後、Dmp1のsmall interfering RNA(siRNA)を培地に加え、象牙質・歯髄複合体の器官培養を行った。窩洞形成後3日において、野生型、Opn KOマウスともに、窩洞直下の歯髄象牙境にNestin陽性象牙芽細胞様細胞の配列が認められた。DMP1/Dmp1の発現は、分化した象牙芽細胞様細胞に認められたが、野生型マウスよりKOマウスにおいてその発現が強く認められた。術後7日において、野生型マウスでは新たに分化した象牙芽細胞のDMP1の発現は減弱していたが、一方、Opn KOマウスでは持続的にDMP1の発現が認められた。野生型マウス器官培養系において、コントロール(c-)siRNA処理群では、新しく分化した象牙芽細胞様細胞に強いDmp1の発現が認められ、歯髄象牙境全体の約70.1%の部位において、Dmp1 si RNA処理群では約52.2%の部位において、Nestin陽性象牙芽細胞様細胞の分化が認められた。Opn KOマウス器官培養系において、c-siRNA投与群では歯髄象牙境全体の約67.1%の部位において、Dmp1 si RNA投与群では約42.8%の部位において、Nestin陽性象牙芽細胞様細胞の分化が認められ、有意差は無いものの、Dmp1とOpnの発現抑制により象牙芽細胞様細胞の分化が阻害される傾向が示された。以上の結果から、DMP1は歯の損傷後の象牙芽細胞の分化過程において、OPNの足場としての作用を代償し、その分化の制御に重要な役割を担っていることが示唆された。
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