研究課題/領域番号 |
17K17085
|
研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
柴田 敏史 沖縄科学技術大学院大学, 生体分子電子顕微鏡解析ユニット, 研究員 (30725057)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | IX型分泌機構 / 浸透圧ショック法 / バクテロイデーテス / 電子顕微鏡 / 滑走運動 / 歯周病細菌 / T9SS |
研究実績の概要 |
バクテロイデーテス門に属する細菌は他の細菌とは異なる独自のタンパク質分泌機構であるIX型分泌機構(T9SS)を持ち、生育に必要な酵素類、病原性タンパク質を分泌するだけでなく、バクテロイデーテス細菌の滑走運動コンポーネントの一部としても機能する。本研究はT9SS分泌複合体を可視化・構造解析し、その分泌メカニズムを解明することを目的とする。 本年度は実験計画に従って透過型電子顕微鏡を用いてT9SS分泌装置の可視化を試みた。浸透圧ショック法を用いたPorphyromonas gingivarisの解析では外膜上に存在すると予想されるPorK・PorNから成ると思われる直径約30 nmリング構造が観察できた。しかしながらそれに付随するペリプラズム領域内の構造は観察できなかった。これと並行して行なったFlavobacterium johnsoniae を用いた解析ではT9SS分泌と滑走運動両方に関与するGldJが外膜の内側に位置するらせん状のレール構造の一部として存在することが判明した。T9SS分泌超分子複合体の単離精製に関して、P. gingivaris を用いると菌が生産するジンジパインプロテアーゼの強力な分解活性のため困難であったため、F. johnsoniaeを用いて行なった。菌体の可溶化と超遠心分離によりT9SS コンポーネントGldK・GldNを含む粗抽出フランクションを得られている。このフラクションをネガティブ染色し電子顕微鏡で観察したが、夾雑物が多く分泌装置にみられる様な特徴的な構造物は見つけることはできていない。さらなる精製、濃縮条件の検討が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T9SS 分泌超分子複合体の全体像は未だ明らかになっていないが、P. gingivaris、F. johnsoniae両バクテロイデーテス細菌において浸透圧ショックを与えた菌体の外膜の近傍にT9SS分泌超分子複合体の一部が観察できた。またT9SS 分泌超分子複合体の単離・精製についても構成タンパク質を含むフラクションが得られているので、さらに条件検討する事で構造解析するための構造が得られると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
T9SS 分泌超分子複合体の全体像を得るために、構造の安定性を保つためのクロスリンク処理等、試料調整の条件検討する。クライオ電子線トモグラフィー法を用いた生体内T9SS分泌超分子複合体の3次元的な可視化、構造解析を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属先変更に伴い、電子顕微鏡解析を現所属機関で行うことが出来る様になり解析のための出張回数が少なくなった。また異動先研究室に十分量の電子顕微鏡グリッド、試薬類があり購入を見送ったため繰越金が発生した。
|