研究課題/領域番号 |
17K17089
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
大塚 裕忠 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (30634844)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | VCAM-1 / Nカドヘリン / Cxcl12(SDF-1) / 大網 / 新規造血構造体 |
研究実績の概要 |
申請者は、平成29年度中に、新規造血構造体誘導実験を実施し、経時的に組織学的解析を進めてきた。その結果、肉眼で認識可能な新規造血構造体を形成する以前から、大網組織中に、TER119陽性の赤芽球が集合する状態を確認した。このことは、リンパ節や造血組織の形態形成とは異なり、予め、ある程度分化の進んだ細胞が集合して構造体の基礎となる組織を形成している可能性が示唆された。さらに、新規造血構造体誘導から、経時的に血清中及び大網におけるサイトカイン発現の解析を行った。その結果、血清中では造血幹細胞や前駆細胞を末梢へと動員するサイトカインであるGCSF濃度の上昇が認められとともに、大網では造血幹細胞や前駆細胞の遊走に関連するCxcl12(SDF-1)の発現が確認された。このことは新規造血構造体形成時には、末梢血中に造血幹細胞や前駆細胞が動員され、同時に大網から造血幹細胞や前駆細胞を誘導する因子が発現されることにより、新規造血構造体形成へと繋がる可能性が示された。これらの結果については、日本解剖学会及び日本比較免疫学会等学術集会において、発表を行っている。 申請者らはさらに、新規造血構造体形成に当たって、造血や炎症に関連する接着因子、VCAM-1,N-カドヘリン,ICAM-1などの大網組織における発現局在を調べた。その結果、一部の接着因子の発現が、新規造血構造体形成時に上昇していることが確認された。このことは、新規造血構造体の誘導される大網では、サイトカイン類のみではなく、ストローマ細胞による造血微小環境が整備されている状況にあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度前半時期は実験環境が整っていたため、順調に研究を進められ、概ね計画通りであった。後半期は所属変更のため、実験が一時的に進められない状況にあったが、少しずつ実験環境を整えることができたため、目立った遅れは生じなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、新規造血構造体誘導における因子についての解析をさらに進めていく予定である。またHistidine decarboxylase欠損マウスを用いて同様の実験系を行うことで、新たな知見をもとめて行きたいと考えている。得られた結果については積極的に学術集会等で発表することで社会への還元を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、所属異動があり、論文投稿や学会発表のための費用を予定より使用しなかったため、次年度は、学会旅費等に使用する予定である。
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