申請者らは骨吸収抑制剤である窒素含有型ビスホスホネート(NBP)を用いて、独自の重症貧血マウスモデルを確立し、腹腔内に新規の造血構造体を誘導することに成功した。 申請者は、前年度中に計画書にある大網の造血微小環境解明のため、サイトカイン類の発現について解析及び、造血前駆細胞の動態について、造血器官である骨髄と末梢血で解析実施し、大網組織において、SCF,IL3といった造血を刺激するサイトカインの発現を確認した。またHSPCsの末梢動員に関与するサイトカインであるGCSFの血清中濃度を測定したところ、NBP投与後に一過性に増加していることが確認された。 そこで今年度は、対照群と重症貧血誘導時の大網におけるサイトカイン類の発現量の変化を解析したところ、造血サイトカインであるIL3やGCSFのほか、ヒスタミン合成酵素であるHistidine decarboxylase(Hdc)の発現の上昇を確認したため、このHdcに着目した研究を進めた。 Hdcを遺伝的に欠損したマウスを用いて、造血組織の解析を実施したところ、骨髄では変化が認められなかったものの、脾臓において、正常時においても野生型よりも赤血球造血が亢進していることが確認出来た。また、脾臓を摘出したところ、髄外造血や貧血を誘導しないにもかかわらず、新規造血構造体の形成を認めた。 以上の結果から、Hdcあるいは、ヒスタミンが新規造血構造体形成に何らかの影響を与えている可能性が示唆された。本研究内容については、解析結果がまだ十分に揃っていないため、今後の更なる研究が必要であると考える。
|