歯科疾患は疼痛を伴うものが多く,疼痛管理は患者の苦痛軽減に加え,予後を左右する重要な因子である.そのため鎮痛効果の高い酸性非ステロイド性鎮痛薬(NSAIDs)が頻用されるが,抗悪性腫瘍薬誘発性の口内炎などには無効である.そのようなNSAIDs抵抗性症例に対し,有効とされる漢方薬(立効散)の炎症性疼痛への鎮痛効果を動物実験にて定量評価したところ,アスピリン並びにアセトアミノフェンと同様の効果を示すことが明らかとなった. そこで次に,その薬物動態の解析と作用機序を明らかにし,適切な投薬ストラテジーの提案を行うこと.さらには代謝産物を抽出し,薬理効果の解析を目的とした. 薬物動態解析を行うためHPLCを用いて評価してきたが,より詳細に検討するためにUPLCを用いることとした.解析を行うにあたり,実験動物の種類の選定,採血の方法,採血量の決定,採取サンプルを取り扱い,適切に保存する器具機材の材質,種類の選定,また,UPLCで解析する際の条件の検討を行い,精度の高い再現性を得られるための条件を探った. 動物実験における鎮痛効果は,立効散経口投与後からの経過時間によって鎮痛効果の発現に違いが見られた.UPLCにおける解析においても,立効散投与後からの経過時間によって,クロマトグラム上に発現するピークに違いが見られた.また,投与濃度依存的に発現するピーク高さに変化が見られた. さらに血清中にみられるピークの中に、立効散由来とみられる特徴的なピークがみられ、これも立効散投与後の時間、鎮痛効果の発現に合わせた変化を見せるものがあった。この特徴的ピークが立効散由来であることを、in vitoroにおける薬物代謝酵素によって再現性を確認する。
|