研究課題/領域番号 |
17K17098
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
塚越 絵里 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (60615384)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 口腔乾燥症 / ベンゾジアゼピン受容体 / ジアゼパム |
研究実績の概要 |
これまでに、抗不安薬が口腔乾燥症を発症することから、その発症メカニズムについて解析してきた。本研究は、精神性疾患患者の口腔状態を改善すべく唾液腺機能維持薬の開発を行うものである。精神性疾患の治療は、抗不安薬や睡眠薬の投与が一般的で長期連用する場合がほとんどである。しかしながら、副作用として唾液分泌の抑制を伴い唾液のもつ抗菌作用を失わせてしまことで、細菌に起因する様々な歯科疾患の発生率が高まってしまう。精神性疾患患者において抗不安薬の投薬を止めることは事実上不可能であるため、これらの疾患の唾液分泌機能の改善が必要である。これまでに我々は、脳と唾液腺に対する抗不安薬の影響について検索したところ、抗不安薬として使用されるベンゾジアゼピン系薬物の受容体が脳と同様に唾液腺にも存在することを明らかにしてきた。そして、PACAP -DBI pathwayで発現するDBIは、抗不安薬の投与により口腔乾燥が起きた時に増加することも明らかにした。本研究の目的は、このPACAP-DBI pathwayのレセプターの阻害薬を動物に局所投与し、抗不安薬投与下でも唾液分泌の抑制を抑えることができるかどうかを明らかにすることである。 本年度の研究実施計画は、唾液腺機能維持薬の作製と培養唾液腺細胞での効果判定である。抗潰瘍薬のレバミピドを経口投与したところ、ベンゾジアゼピン系薬物のジアゼパムを長期間投与した口腔乾燥発現モデルラットにおいて、唾液分泌の抑制が回復した結果が得られたことから、レバミピドを利用した唾液腺機能維持薬の作製を進めている。また、培養唾液腺細胞において、レバミピドがジアゼパムによって抑制された細胞内カルシウムイオン濃度を回復させた結果が得られている。これらの結果により、抗不安薬投与下で口腔乾燥症を発現したモデル動物においてレバミピドの唾液分泌抑制に対する改善効果が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に従って、予定通り研究は進み結果が得られている。抗潰瘍薬のレバミピドが、ベンゾジアゼピン系薬物のジアゼパムを長期間投与した口腔乾燥発現モデルラットにおいて唾液分泌の抑制が回復した結果が得られたこと、また、培養唾液腺細胞において、レバミピドがジアゼパムによって抑制された細胞内カルシウムイオン濃度を回復させた結果が得られた。これらの結果により、唾液腺細胞レベルにおいてレバミピドの唾液分泌抑制に対する改善効果が示された。本研究結果については、論文にて発表することができた。現在、培養唾液腺細胞を使って、局所に投与した場合の細胞内変化について遺伝子レベルで解析している。唾液分泌機能維持薬を局所に投与するための安全性を評価するため、培養唾液腺細胞におけるレバミピドの毒性試験を行いその安全性も確認している。さらに、レバミピドを口腔内細菌に作用させた結果、細菌増殖を抑制する副次的な結果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、PACAP-DBI pathwayのレセプターの阻害薬を利用して唾液腺機能維持薬を作製することを目的としていたが、抗潰瘍薬のレバミピドのほうが、より唾液分泌の改善に有効であった結果が得られたため一部変更して研究を進めている。さらに今後、レバミピドを局所に投与するための唾液腺機能維持薬の調整と、臨床応用に向けた動物実験による唾液腺機能維持薬の効果判定が必要である。完成した唾液腺機能維持薬をラットの口蓋に貼付し、その効果を解析するため、口腔乾燥発現モデルラットから唾液腺組織を摘出し、組織切片を用いてレーザー・キャプチャード・マイクロダイセクション法(LCM法)により唾液腺細胞を取り出し、DBIの発現量と細胞内カルシウムイオン濃度を解析する計画である。細胞レベルでの遺伝子の発現動態を解析することにより、機能を産生する細胞を明らかにすることができ、唾液腺機能維持薬の効果を上げることが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述したように、若干の研究内容が変更になったため、その新たな実験に不可欠な試薬を購入する必要が生じた。 (使用計画) 前述の理由により、今年度に購入を控えた物品を次年度に購入する予定である。
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