本研究の目的は、近年臨床現場で注目されている非歯原性歯痛発生時に三叉神経節ニューロンで起きている変化をγアミノ酪酸であるGABAに着目し解明する事である。 中枢神経系での抑制性伝達物質として知られるGABAであるが、末梢領域での存在意義や、その役割については現在までほとんど知られていない。 我々は正常群と比較して、末梢支配領域炎症モデル動物の三叉神経節においてGABA合成酵素のGADの発現が有意に増加していることを免疫組織化学的手法で確認し、加えてマイクロイオントフォレシス細胞外記録法によりバクロフェンが三叉神経節ニューロンの活動性に変調をもたらす事をつきとめた。これらが慢性炎症に起因する顎口腔顔面領域の痛覚過敏や異痛症、ひいては非歯原性歯痛発現の一因となっている可能性がある事を示唆している。 GABA受容体作動薬は従来より、疼痛の治療薬として知られており、これらの知見は歯科臨床領域における異常疼痛発現機構の病態解明に基礎を与え、GABA B受容体関連物質、Kチャネル開口薬が三叉神経系の疼痛緩和に貢献し、臨床現場における今後の顎口腔顔面領域の異常疼痛や非歯原性歯痛治療に広く応用できる可能性を明らかとした。 現在までの研究内容を後任に引継ぎ、現有設備および平成29年度購入設備を使用することにより、当研究機関からの今後のさらなる国内外学会・研究論文発表などに結びつき、歯科医療の発展に貢献することが大いに期待できる。
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