研究課題
ジカウイルスはフラビウイルス属に分類されるRNAウイルスであり、ヒトへの感染は主にウイルスに感染した蚊に吸血されることにより成立する。ジカウイルスは1947年にウガンダの森に生息していたアカゲザルから初めて分離されたが、この株はアフリカ株と呼ばれている。その後、ジカウイルスはアジアを経由して世界中に広まった。これらはアジア株と総称される。近年、ジカウイルスの局所的な大流行が相次いで報告された。特に2013年のフランス領ポリネシアでの大流行や2015年のブラジルでの大流行ではそれぞれギランバレー症候群、小頭症との関連が報告され、国際的な問題となったが、現在も有効な治療薬やワクチンが存在しない。ウイルス感染の成立にはウイルス粒子が宿主細胞へ侵入する過程が重要である。この過程を阻害する技術が確立すれば、予防薬の開発が進むことが期待される。そこで我々はジカウイルスのアフリカおよびアジア株の1回感染性ウイルス様粒子(SRIPs)を独自に作製し、宿主細胞への侵入能を比較した。結果、アフリカ株がアジア株に比べて侵入能が高いことを明らかにした。さらに、アフリカ株エンベロープ領域C末端側201アミノ酸の中に侵入能に重要な領域が存在することを突き止めた。この領域には両株間で11箇所の違いが存在する。アフリカ株の当該アミノ酸をアジア株のものに変異させたSRIPsをそれぞれ作製し、侵入能を解析したところ、特にこの中の3箇所のアミノ酸の変異で侵入能が低下することが明らかになった。さらに3箇所中から2箇所を組み合わせ、2アミノ酸変異SRIPsを作製したところ、それぞれの1アミノ酸変異の場合よりも大きな侵入能の低下が確認された。以上の結果を元に、ウイルスエンベロープに存在する上記3つのアミノ酸を標的にする技術を確立することで、ジカウイルス感染症に対する新たな予防薬の開発への応用が期待される。
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