研究課題
今後の癌治療において、治療法(薬)による副作用の軽減、および癌の再発と転移の阻止が患者にとって重要です。癌幹細胞の存在が癌の再発と転移の原因と考えられ、癌幹細胞を制御する方法の開発が望まれています。我々は副作用のない癌抑制法開発の研究過程で、ケモカインCXCL14が生体内に存在する副作用のない多機能癌抑制分子であることを明らかにしてきました。本申請ではCXCL14が癌幹細胞の最終分化を促進して癌の進展抑制をする機構を癌幹細胞を含む口腔癌(頭頸部癌)細胞と遺伝子を改変した癌細胞を用いて明らかにする。口腔癌細胞(HSC-3)とおよびCXCL14遺伝子を導入したHSC-3-CXCL14細胞、 CXCL14遺伝子発現を欠損させたHSC-3-1A細胞を播種し、RNAを採取、精製後RT-PCR法を用いて種々の遺伝子の発現量を比較した。また、一部の細胞についてはヌードマウスの皮下に移植し、腫瘍の増殖と癌幹細胞マーカーの発現を検討した。HSC-3-CXCL14細胞において幹細胞(分化多能性)マーカーNANOGの発現レベル、及び癌幹細胞マーカーのCD44v3、CD44v6、CD44v9の発現はHSC-3細胞およびHSC-3-1A細胞より有意に低い値を示した。一方、ヌードマウス皮下における移植実験では、HSC-3-1A 細胞はHSC-3細胞より大きな腫瘍を形成し、腫瘍内のNANOG、KLF4、及び癌幹細胞マーカーCD44v3、CD44v6、およびCD44v9の発現量も高かった。HSC-3細胞においてCXCL14は幹細胞マーカーおよび癌幹細胞マーカーの発現などを介して癌幹細胞性を制御している可能性が示された。本研究結果により、将来、生体内の癌抑制機構の活性化による、副作用のない、廉価で種々の癌に適用可能な、患者に優しい、画期的な 癌抑制法および予防法開発ためのデーターを提供できる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
International Journal o f Molecular Sciences
巻: 20 ページ: 1-13
10.3390/ijms20081872