研究課題/領域番号 |
17K17117
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
秋山 茂範 東北大学, 歯学研究科, 研究科研究員 (50747574)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 再石灰化 / 脱灰抑制 |
研究実績の概要 |
近年,超高齢化社会を迎えて高齢者の保有歯数も増加している一方で,根面う蝕が急増しており,根面う蝕に対する予防や欠損の浅い初期活動性根面う蝕には再石灰化を試みながら管理することが求められている。しかしながら,現状のフッ化物適応などによるホームケアのみでは高齢者の健康状態によっては根面う蝕を確実に管理することは困難である。そこで本研究の目的は,1)水溶性バイオアクティブガラスを作製し,2)マルチイオン放出性コーティング材料を新たに開発し,根面う蝕に適した新規処置手段を確立することである。 今年度は以下の研究を行った。 1)水溶性バイオアクティブガラスの開発 ガラス配合を検討し,白金るつぼを用い電気炉で溶融し水溶性バイオアクティブガラスを作製した。本ガラスは粉砕を行い,コーティング材料に配合しやすいガラス粉末を作製した。粉砕条件により,ガラス粒径の制御が可能となった。水に対する溶解性についても確認し,pHも配合により制御可能となった。また,水中にフッ素,亜鉛,カルシウム,リン等の根面う蝕の予防・治療に有効なイオンが放出されることを確認した。現段階では,コーティング材料に最適なガラス粒径は未確認のため,より効果的なガラス粒径の検討を進める。また,水中への経時的なイオン徐放量の制御についても,ガラス配合を調整しながら検討を進めていく予定である。 2)マルチイオン放出性コーティング材料の開発 水溶性バイオアクティブガラスを配合したコーティング材料について配合検討を行い,試作したコーティング材料は,JIS T 6611(歯科用レジンセメント)に準拠し,歯根面へのせん断試験で歯質接着性を評価した結果,接着性は充分に有することを確認した。しかしながら,臨床使用を想定した評価である歯ブラシ摩耗性と長期保存性について未確認であるため,今後は摩耗性と保存性を両立したコーティング材料の開発を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度では,新規水溶性バイオアクティブガラスの水溶性やイオン徐放性について問題ないことを確認し,マルチイオン放出性コーティング材料の歯質接着性を評価することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
根面う蝕の予防・治療法として有効なマルチイオン放出性コーティング材料の開発を引き続き進め,以下の評価を実施する。 1)コーティング材料に配合するために有用なガラス粒径の検討を進め,水中への経時的なイオン徐放量の制御方法について検討する。 2)コーティング材料の配合検討を行い,歯ブラシ摩耗試験,接着性・長期保存性の評価を実施する。 3)牛歯へコーティング材料を塗布し,歯質の再石灰化評価・脱灰抑制評価を行い,コーティング材料の有用性について検証する。さらに口腔粘膜上皮細胞を用いた細胞毒性試験により生体安全性の検証も進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 今年度の研究を効率的に推進したことに伴い,予算内で達成できたため。 (使用計画) 平成30年度請求額と合わせ,次年度に計画しているマルチイオン放出性コーティング材料の開発の研究遂行に使用する予定である。
|