研究課題/領域番号 |
17K17118
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山本 弥生子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (50732749)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HMGB1 / 歯髄炎 / 非感染性 / マクロファージ / 歯髄細胞 |
研究実績の概要 |
歯髄炎は主にう蝕に継発して発症するが、う蝕に継発しない歯髄炎も存在する。咬合性外傷、矯正治療、バーといった歯科用機材による切削の後に発症する歯髄炎は、細菌感染ではなく物理的侵襲が原因と考えられているがその発症メカニズムはいまだ不明である。ところで、HMGB1はDamage-Associated Molecular Patterns(DAMPs)等の刺激により細胞より放出されるおおよそ215残基のタンパク質で、動脈硬化、間接リウマチなどの非感染性の炎症疾患との関連が報告されている。本研究の目的は、非感染性歯髄炎におけるHMGB1の役割を明らかにすることである。 令和元年度においては、株化マウス歯髄細胞MDPs(mouse dental papillae cells)の壊死細胞上清(necrotic cell supernatant:NCS)をMDPsに添加し、炎症性メディエーターのmRNA発現をリアルタイムPCRにて、タンパク発現をELISAにて解析した。また、ヒト歯髄細胞hDPCs(human dental pulp cells)を用いて同様の実験を行った。さらに、NCS添加後の細胞増殖について、WST-8アッセイにて検討した。 その結果、MDPsおよびhDPCsにおいて、NCS添加後2時間においてIL1α、IL6mRNA発現の一時的な増加が認められた。一方、IL6タンパク産生は6、12時間で産生量の増加が確認された。また、ヒト歯髄細胞にNCSを添加後12時間においてNCS濃度依存的に細胞増殖の低下が認められた。さらに、MDPにHMGB1タンパク質を添加したところ2hでHMGB1のmRNA発現の増加が認められた。 以上の結果より、歯髄細胞の壊死に伴い放出されるHMGB1が非感染性に歯髄炎を惹起する、あるいは修飾している可能性が推察された。、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HMGB1の作用が不安定で、再現性のある結果を得るまで時間がかかってしまった。現在炎症性メディエーター産生を誘導するところまで解析が終了したが、そのメカニズムについてはいまだ不明である。HMGB1はToll-like Receptors(TLRs)に結合し、その下のシグナルを活性化すると報告されている。早急にTLRs下流のシグナル発現について解析を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
HMGB1を添加しもとにin vitroでNFkB等のシグナル伝達等についてWestern Blottingを行っていく。また実際に熱刺激などによる非感染性炎症をラットあるいはマウス歯髄に惹起し、HMGB1発 現を検討する。結果がまとまり次第学会にて発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初シグナル解析まで行う予定であったが、その前段階である炎症性メディエーター発現の解析結果が安定せず、安定するまで炎症性メディエーター発現解析を繰り返した。そのため、シグナル解析を行うために準備していた経費が次年度へ移行してしまった。さらに、コロナウイルス感染症の拡大に伴い、研究室が閉鎖されたため、予定された研究の遂行が不可能となってしまい、当初予定の研究計画経費が次年度へ移行してしまった。
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