研究実績の概要 |
歯髄炎は主にう蝕に継発して発症するが、う蝕に継発しない歯髄炎も存在する。咬合性外傷、矯正治療、バーといった歯科用機材による切削の後に発症する歯髄炎は、細菌感染ではなく物理的侵襲が原因と考えられているがその発症メカニズムはいまだ不明である。ところで、HMGB1はDamage-Associated Molecular Patterns(DAMPs)等の刺激により細胞より放出されるおおよそ215残基のタンパク質で、動脈硬化、間接リウマチなどの非感染性の炎症疾患との関連が報告されている。本研究の目的は、非感染性歯髄炎におけるHMGB1の役割を明らかにすることである。 これまでにマウスマクロファージ様株細胞RAW264.7、株化マウス歯髄細胞MDPs(mouse dental papillae cells)、ヒト歯髄細胞hDPCs(human dental pulp cells)に種々の細胞の壊死細胞上清(NCS)を添加し炎症性サイトカイン(IL6,IL1a)の発現の増加や細胞増殖の低下といった影響を明らかにしてきた。 令和2年度においては、MDPsのNCS内のHMGB1タンパク量をウエスタンブロッティングにて解析した。さらにMDPsにHMGB1タンパク質を添加しIL6及びHMGB1のmRNA発現をリアルタイムPCRにて、IL6タンパク産生をELISAにて検討した。 その結果NCS中でのHMGB1タンパク質の存在を確認し、HMGB1添加後2時間でHMGB1、IL6のmRNA発現の増加が12時間でIL6タンパク産生の増加が認められた。 以上の結果より、歯髄細胞の壊死に伴い放出されるHMGB1が非感染性に歯髄炎を惹起する、あるいは修飾している可能性が推察された。
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