直性歯根破折(VRF)は、齲蝕や歯周病と同様に、歯を喪失する原因となる。これまでVRFと根管治療との関連が指摘されている。しかし、具体的な発生メカニズムは未だ解明されていない。その原因の一つとして、非破壊的検査が困難であったことが挙げられる。近年、画像診断技術が発展し、微細な亀裂を非破壊的に検出することが可能となった。そこで、本研究課題では、光干渉断層計(OCT)を用いて、根管治療過程における亀裂発生の検出および解析を行い、そのメカニズムの解明を行うことを目的とした。 歯髄腔の形態観察におけるOCTの有用性を、歯科用コーンビームCT(CBCT)、歯科用実体顕微鏡(DOM)と比較・評価した。その結果、OCTは歯髄腔・イスムスの検出に高い感度と特異度を示すこと、OCT、CBCT、マイクロCTの残存象牙質厚みの計測値に強い相関があること、OCTとDOMで側枝は検出されないこと、および、OCT、CBCT、DOMで検出された根管数はマイクロCTと強い相関を示すことが示された。 歯根尖切除、超音波装置による逆根管窩洞形成、および逆根管充填時に発生・伸展する亀裂に対するOCTの検出能を、ヒト抜去下顎切歯を用いて評価した。その結果、デジタルマイクロスコープ(DM)で歯根尖切除後47%、逆根管窩洞形成後87%に亀裂を認めたが、OCTとDMの相関は弱く、またOCTはDMより感度が低いことが示された。 以上より、OCTはRDTの計測でCBCTと同等の精度を示すとともに、歯根の内部構造の検出にも有用であり、偶発露髄の防止、アクセス窩洞の確認、根管内の観察などに応用できる可能性が示唆された。象牙質の亀裂や側枝の検出にはOCTの有効性は十分とは言えず、今後の研究が必要と思われる。
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