研究課題/領域番号 |
17K17121
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
佐竹 和久 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (90707259)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Er:YAGレーザー / 半導体レーザー / キャビテーション / 根管洗浄 / 根管側枝 / 蒸気泡 / 高速度カメラ / 圧力測定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、コンピューター制御によってチップ先端の加工および調整が可能となった半導体レーザーの照射によるPDT(Photodynamic therapy)を用いることで、根管内の清掃困難な部位の残存細菌や不良肉芽の処理を行い、根管の拡大を従来よりも最小限に留めつつ、レーザーを用いた根管洗浄によって根管の無菌化を可能にするための、生体により安全なPhoto dynamic-LAI根管洗浄を開発し、臨床応用を確立することである。 平成29年度の研究実績は以下の通りである。 1.従来のLAIにおけるキャビテーションの挙動を検証するため、R200Tチップ(円錐状、φ200 μm)、R600T(円錐状、φ600 μm)、C600F(平坦、φ600 μm)を用いて、70 mJ、25ppsの条件で作用させた.各群7回ずつ計測し,模擬根管内の蒸気泡の発生挙動をハイスピードカメラで照射から100μsec、500μsec、1000μsec時点での【蒸気泡の数、面積、速度】について解析した。 その結果、測定した時間(100-1000μsec)での蒸気泡の数および速度に関してチップ間に有意差を認めなかった。また、C600FチップではR200TおよびR600Tチップよりも有意に面積の小さな蒸気泡を生じていた。以上より、Er:YAGレーザーを使用したLAIにおいて,蒸気泡の形状はレーザーチップ形態により異なっていることが示された。 2.R200Tチップ、R600T、C600F、Brushチップ(ブラシ状)の4種類のチップを用いて根尖孔外の圧力および蒸気泡の挙動について実験を行い、比較した。 その結果、根尖孔外の圧力および蒸気泡の挙動はレーザーのパルス数およびチップ形態により異なり、小径のチップが束となったブラシ状チップでは、根尖孔外の圧力が小さく蒸気泡の挙動が異なっていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに我々は、概ね当初の予定通り、Photo dynamic-LAI 洗浄時の根尖孔外圧力測定、高速度カメラによる根尖孔外の観察高速水流の流量分布とキャビテーション発生の分布の解明について、LAIで生じる根尖孔外の圧力および根管内での蒸気泡の挙動に着目し実験を行った。 しかし、平成29年度に予定していたPhoto dynamic-LAI 洗浄時のE.faecalis 殺菌効果についての検証は、当研究チームにない実験設備を用意する必要があり、現在ようやくそのための実験環境を準備できる段階に至ったのみである。 本研究における基礎的な結果により、臨床応用にあたって従来の治療法と比較して、良好で安全な結果を得られる可能性を有すると考えられる。しかし、これまでに海外の学会において情報収集を行ったが、我々の予想よりもこのテーマについての研究の進行が早く、現在臨床での応用を検証しているということが判明している。このLAIを用いた根管洗浄に関し世界中が関心を抱き研究を進めており、この手法が将来的に極めて効果的な根管治療に寄与するものと確信に至っている。 以上より、本研究は当初の予定通りやや遅れて進行していると言えるが、進行自体に特に問題はないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、Photo dynamic-LAI 洗浄時のE.faecalis 殺菌効果について検証するための実験環境の準備に至り、抜去歯を対象とした実験を開始する予定である。まずはじめに、根管内に生息する細菌について、残存しているDNA、RNAから細菌の種類を同定する手法を用いる。その後滅菌した抜去歯の弯曲根管(下顎大臼歯近心根等)に意図的にレッジを作り、根管内にE.faecalisを播種し、その上で従来の根管洗浄とLAI洗浄時の効果を比較する。 具体的にはPhoto dynamic-LAI 洗浄時のE.faecalis殺菌効果につき、試料としてイスムスを含むヒト抜去下顎大臼歯近心根を30 本を使用し、歯根長12 mm となるよう歯冠を切断、#40K ファイルをMAFとして通法通りに0.06 テーパーの根管形成形成を行い、またゲーツグリッデンドリル等を用いて弯曲部にレッジを意図的に形成する。半導体レーザー(OsadaLightdurge, Osada,3W)および試作色素液を用いたPD-LAI 洗浄群(PD-LAI 群)、新規半導体レーザー(AltaLMS, DentalPhotonics)および試作色素液を用いて行った群(PD-LAI2 群)また上記の条件でまた試作色素液のみの群、新通常の洗浄を行った群の4 群で細菌減少量を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度に予定していたPhoto dynamic-LAI 洗浄時のE.faecalis 殺菌効果の検証につき、平成30年度に行うこととなったため、当該助成金が生じた。 (使用計画) 平成30年に当該助成金を今後の推進方策に従って使用予定であり、その他に関しては計画通りである。
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