国際歯科連盟(FDI)が提唱したMinimal Intervention Dentistryは、再石灰化やう窩を形成したう蝕への最小限の侵襲、欠陥のある修復物の補修などといったう蝕のマネージメントに関する声明である。 非侵襲的である再石灰化療法は、初期のエナメル質齲蝕を管理する際の最小限の介入治療として有用であるが、う窩を形成し修復治療を必要とする状況には日常臨床で多く直面する。疾病の原因である口腔細菌叢の改善を図り、患者教育を行い、う蝕の脱灰・再石灰化という流動的な現象への積極的な介入をして、発症と進行を抑制する治療を採用することが提唱されているが、その上で、進行を停止することができないう蝕や機能的、審美的に問題のあるう蝕に対して、歯質を切削する際に「最小限の侵襲」にとどめる必要がある。 本年は、「最小限の侵襲」に重点を置き、下記の研究成果を得た。 う窩を形成し、窩洞形成、印象、仮封が必要となった場合、修復物装着前の窩洞の清掃にMDP(10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate)含有の洗浄剤が注目されている。象牙質面に対する報告はこれまでもあったが、象牙質と歯髄を保護するために行われるレジンコーティング面に対する検討を行った。MDPは、親水性基と疎水性基を持ち、強い界面活性作用が期待できることにより、仮封材がレジンコーティング面から容易に除去できると考えられたが、仮封材の硬化途中といった特殊な状況下では、グリシン粉末を用いたエアアブレージョンの方がより有効であった。
|