研究課題
コンポジットレジンと象牙質の接着においては、酸エッチングによって露出したコラーゲン中に存在する水素結合をしていない水、すなわち自由水や不完全結合水が、アドヒーシブ中のモノマーと置換することで接着性を獲得している。しかし、それらの水が合理的に除去・置換されないと、コラーゲンは水素結合により凝集し、十分な接着を得ることができない。以前の研究より、エタノールを用いると、MMP抑制物質や架橋結合作用物質を使用しなくても接着耐久性が得られることが示唆されている。エタノールは脱灰象牙質から自由水および不完全結合水を除去し、湿潤コラーゲンやプロテアーゼにレジンモノマーを浸透させる働きがある可能性がある。本年度は、固定相に脱灰象牙質パウダーを用いたサイズ排除クロマトグラフィーを応用して行った。先行研究で、水を移動相としてHEMAやTEGDMAの分子が水に浸した脱灰象牙質中のコラーゲンに浸透できるということを実証してきたが、このサイズ排除クロマトグラフィーの移動相に無水エタノールを用いて、自由水や不完全結合水を化学的に除去してもコラーゲン分子間のスペースが保たれ、ジメタクリレートがコラーゲン間に侵入できるかどうかについて検証した。また、エタノールに一定量の水を加え同様の実験を行ったところ、結果、コラーゲン中にジメタクリレートが浸透するために、最適な水の添加割合を知ることができるのではないかという可能性が示唆された。次年度は、移動相にHEMAを使用し、同様の実験を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、計画書に従い、サイズ排除クロマトグラフィーのセットアップを行うこと、象牙質パウダーの作成ステップを確立することが出来た。
今後は治療計画に基づき、HEMAを用いたサイズ排除クロマトグラフィを行っていく予定としている。ただし、HEMAの吸光度はTEGDMAおよびBisGMAのそれと同値あるいは非常に近いため、分光光度計での検出が難しい可能性がある。その場合、HEMAを水もしくはエタノールで希釈して検出させるか、トレーサーとして使用するジメタクリレートを変更する必要があるかもしれない。HEMAを用いてサイズ排除クロマトグラフィーをスタートさせる前に、検出方法についての何らかの方策が必要であるとかんがえられる。
本年度は、購入を予定しておいた、分光高度計などは、次年度購入予定である。
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Dental Materials Journal
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10.4012/dmj.2017-240