平成29年度は、まずラット感染根管治療モデルの改良を目的として実験を行った。ラット下顎第一臼歯の4根管のうち1根管を露髄、3根管を断髄することにより、1根のみに実験的根尖病変を形成した後、その根の感染根管治療を行う改良モデルを作製した。改良モデルは、マイクロCTによる根尖病変の三次元的解析および組織学的観察により評価した。 10週齢の雄性Wistar系ラットの下顎両側第一臼歯にラット用の特製クランプを用いてラバーダム防湿を行い、咬合面をラウンドバーにて髄腔開拡、天蓋除去後、冠部歯髄を除去した。近心根以外の3根の根管口にMTAセメントを置いて覆髄し、近心根の歯髄を口腔内に曝露することによって近心根のみに根尖病変を形成させた。露髄4週後、ラバーダム防湿下で下顎右側第一臼歯近心根のみに根管治療を行った。根管充填後、フロアブルコンポジットレジンにて窩洞を封鎖した。下顎左側第一臼歯は対照歯とし、根管治療を行わなかった。すべての処置は手術用マイクロスコープ観察下で行った。一定期間後にマイクロCTにて撮影後、三次元画像解析ソフトを用いて根尖病変の体積を計測した。また、各期間においてラットを屠殺し、摘出した顎骨を処理後、薄切切片を作成した。得られた切片に対してHE染色を施し、組織学的観察に供した。 改良モデルでは、露髄4週後の根尖病変体積が現行モデルほど大きくならなかった。そのため、改良モデルの根管治療後の体積縮小率は対照群と比較して有意な差を認めなかった。組織学的観察においても同様の結果となった。断髄した根管内の歯髄に炎症像は認められず、正常歯髄組織が観察された。 以上の結果より、治療の評価を行うにあたって、根管治療前に十分な根尖病変の大きさになっていることが必要であるため、現行の4根管治療モデルを次年度の実験に使用することとした。
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