研究課題
本研究では、難治性根尖性歯周炎と言った、機械的除去が困難な部位に形成されたバイオフィルムに起因するオーラルバイオフィルム感染症の新規抑制制御法の開発を念頭に、ヒト口腔内サンプルを用いて作製した複数のバイオフィルムモデル間の違いについて検討し、バイオフィルム研究に最適かつハイスループットなex vivoバイオフィルムモデルを開発することを目的とし、口腔内サンプルを用いた静置系およびフローセル系バイオフィルムモデルを用いた定量的・定性的解析を行う計画であった。上記の目的、研究実施計画に則り、静置系およびフローセル系バイオフィルムモデルを用いて口腔内サンプルよりバイオフィルムを作製し、作製したバイオフィルム中の細菌数について培養法を用いて解析したところ、いずれのモデルにおいても1週間から3週間までの観察期間を通して経時的に増加し、またその細菌数はフローセル系バイオフィルムの方が早く増加することが明らかとなった。さらに、共焦点レーザー顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて作製したバイオフィルムを定性的に解析したところ、共焦点レーザー顕微鏡による観察では、観察期間である3週間まではほぼ生菌からなるバイオフィルムが形成されることが明らかとなった。また、走査型電子顕微鏡を用いたバイオフィルムの微細形態学的観察では、経時的にバイオフィルムの厚みが増し、形態の異なる複数菌種からなるバイオフィルムが形成されている様子が明らかとなり、バイオフィルムの構造が複雑化していく様子が観察された。さらにin situで作製したバイオフィルムとex vivoで作製したバイオフィルムをピロシーケンス解析の結果、いずれのモデルにおいても類似した構成細菌が認められた。以上の結果より、口腔内サンプルを用いて作製したex vivoバイオフィルムは経時的に生菌数が増加するとともに成熟することが明らかとなった。
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