研究課題/領域番号 |
17K17142
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石井 亮 日本大学, 歯学部, 専修医 (20755144)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 唾液 / CAD/CAM用ハイブリッドレジン / 表面自由エネルギー |
研究実績の概要 |
CAD/CAM用ハイブリッドレジンへの唾液汚染の影響に関する界面科学的検討の一環として,CAD/CAM用ハイブリッドレジン表面における唾液汚染および表面処理の影響を,各表面処理後のCAD/CAM用ハイブリッドレジンにおける表面自由エネルギーを指標として検討,併せて接着強さ試験およびCAD/CAM用ハイブリッドレジン表面の形態学的な検討をするためにSEM観察を行った。その結果,CAD/CAM用ハイブリッドレジンにおける表面自由エネルギーは,唾液汚染によって低下するものの,各表面処理によって正の値を示した。このことから,唾液汚染されたCAD/CAM用ハイブリッドレジン表面は,各表面処理によって清掃効果を得たと考えられた。表面自由エネルギーの各構成成分で比較すると,いずれの条件においても分散成分が支配的であるものの,唾液汚染により有意に低い値を示した。一方,極性成分はいずれのCAD/CAM用ハイブリッドレジンにおいても唾液汚染が生じることで消失したが,表面処理によって高い値を示した。また,水素結合成分はいずれのCAD/CAM用ハイブリッドレジンにおいても唾液汚染によって有意に低下し,表面処理を行うことによって向上した。これらのことから,CAD/CAM用ハイブリッドレジンに対する唾液汚染および表面処理は,CAD/CAM用ハイブリッドレジン表層の界面科学的特性を改質させたものと考えられた。また,SEM観察からも形態学的な差を確認することができた。CAD/CAM用ハイブリッドレジンに対するレジンセメントの24時間後の接着強さは,いずれのハイブリットレジンにおいても唾液汚染によって有意に低下するものの,各表面処理を行うことによって向上した。このような唾液汚染の除去法の違いによって,CAD/CAM用ハイブリッドレジンのレジンセメントに対する接着耐久性が影響を受けた可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度の研究計画であるCAD/CAM用ハイブリッドレジンへの唾液汚染の影響に関する界面化学的検討を行い,表面処理後のCAD/CAM用ハイブリッドレジンにおける表面自由エネルギーの成分分析から,界面におけるレジンセメントとの相互作用については十分な結果が得られている。また,CAD/CAM用ハイブリッドレジンへの唾液汚染後の表面処理によるレジンセメントの接着性についても接着強さ試験との相関性も判明しており,これらの検討による接着機構の評価の重要性も明らかとなった。当初予定していた実験が予想より順調に遂行されており,これらの検討とともに,長期接着耐久性についての結果も得られているため当初の計画以上に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に実施した研究結果に基づいて,表面処理後のCAD/CAM用ハイブリッドレジンにおける表面自由エネルギーの成分分析から,界面におけるレジンセメントとの相互作用について検討する。すなわち,臨床操作を考慮し唾液およびシリコーンゴム適合検査材による表面汚染を行った後,各表面処理を行い,それぞれの固有な表面自由エネルギーを求め,接着試験およびSEM観察から考察を行う。これらの検討に平成29年度の研究結果を加えて検討し,CAD/CAM用ハイブリッドレジンに対する表面汚染後の汚染物質の除去法および表面処理後のレジンセメントの接着性について考察する。このことによって,CAD/CAM用ハイブリッドレジンに対する表面汚染後の汚染物質の除去法および表面処理後のレジンセメントの接着性について新たな知見を加える。
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