研究実績の概要 |
我々の先行研究にてヒアルロン酸はdental pulp stem cellのCD44を介して象牙芽細胞分化誘導を示すことを明らかにしたが、CD44の発現が普遍的に象牙芽細胞分化誘導に重要であるのか明らかになっていない。そこで我々はヒアルロン酸とは薬理機能的に関係なく、歯髄幹細胞を象牙芽細胞へと分化誘導する試薬を探索し、その試薬による象牙芽細胞分化誘導にCD44が関与しているのかを検証する。 まず、我々はビタミンK群には骨の形成促進や組織の石灰化に作用するものを含むことから、ビタミンKの基本骨格であるナフトキノン誘導体を中心に、歯髄幹細胞の象牙芽細胞様分化誘導に関与する化合物があるのか探索した。その中でDPSCs象牙芽細胞分化誘導メカニズムの詳細を検証した。 我々の探索からshikonin をDPSCsに処置することにより、象牙芽細胞のマーカーであるdentin shialophospohprotein(DSPP)が発現されることがわかった。またそのDSPPの発現はPI3K inhibitor, AKT inhibitor, mTOR inhibitorにより抑制された。またCD44をノックダウンしたDPSCsではshikoninによるDSPPの発現が抑制された。 Shikoninには歯髄幹細胞を象牙芽細胞へと分化誘導する機能があり、その分化誘導にはAKT-mTOR シグナル伝達と、CD44が関与していることを明らかにした。以前の研究でhyaluronanはCD44を介して象牙芽細胞分化誘導することを明らかにしていることから、歯髄幹細胞の象牙芽細胞分化誘導にはCD44が重要であることが示唆された。 歯髄幹細胞の象牙芽細胞分化誘導にはCD44の発現が重要であることがわかったが、その一方でshikoninによるAKT-mTOR シグナルとCD44との関連は未だ明らかになっていないため将来の課題である。また本研究により、Shikoninには歯髄幹細胞の象牙芽細胞分化誘導剤として有用かもしれないし、また歯髄保護などの歯科臨床応用の可能性もあることが示唆された。
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