研究課題/領域番号 |
17K17148
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鎌野 優弥 東北大学, 大学病院, 助教 (70757260)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | iPS細胞 / Notchシグナリング / 遺伝子導入 |
研究実績の概要 |
Notch シグナル制御を可能とするNICD遺伝子発現制御性iPS細胞株を樹立した。具体的にはNICD遺伝子のエントリーベクターをAddgene社より購入し、当分野が所有しているPiggyBacトランスポゾン発現ベクターに組み込み、NICD遺伝子発現ベクターを構築した。この発現ベクターをマウスiPS細胞にエレクトロポレーション法により遺伝子導入し、耐性薬剤存在下にて培養することにより樹立した。 樹立した細胞株のNICD1発現調節能を遺伝子レベルおよびタンパク質レベルで解析を行った。具体的にはRT-PCR法を用いてNotch1の発現および、Notchシグナルのターゲット因子であるHes1、Hes5、Hey1、およびHeyLの発現を検討した。ドキシサイクリン添加群において、Notch1および下流の遺伝子群の発現が有意に上昇したことを認めた。また、ウェスタンブロッティング法により、ドキシサイクリンの添加によりNICD1の発現が有意に上昇することを認めた。このことから、樹立したNICD遺伝子発現制御性iPS細胞株がドキシサイクリンの添加によりNICD1を誘導し、Notchシグナルを活性化させることが示唆される。 また、使用した発現ベクターはNICD1とGFPがタンデムに発現するようにしており、GFPの発現を確認することで、NICD1の発現が確認することが可能であることが可能である。この特性を生かして、NICD1の発現が1 ug/mlのドキシサイクリン添加で最大となることを明らかにした。 現在、この細胞を用いて、神経堤細胞への分化能の検討を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞に遺伝子導入し、細胞をセレクションする条件検討に時間を要したため、分化能の検討が終了していないが、現在行っており、おおむね順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、樹立した NICD 遺伝子制御性iPS細胞株の神経堤細胞への分化能の検討を行う。 その後、iPS 細胞由来神経堤細胞を NICD の発現制御下で骨芽細胞に分化誘導し、骨芽細胞としての形質を試験管内および動物実験で評価する。 試験管内の評価においては、樹立した NICD 遺伝子制御性iPS細胞株から分化誘導した神経堤細胞を、当研究室で確立している骨分化誘導法に則り、ハイドロコルチゾン、β-グリセトフォスフェート、アスコルビン酸含有の培地で 20日間から 30日間培養し、骨芽細胞分化能及び骨基質産生能を評価する。NICD 遺伝子の発現の有無による骨芽細胞への分化能も併せて評価する。骨芽細胞分化能は、ALP 染色や runx2, osterix, osteocalcin等の骨芽細胞分化関連遺伝子の発現について real time RT-PCR 法で解析し、骨基質産生能の評価にはカルシウム定量法、Alizarinred染色、von Kossa染色を用いて評価する。 また、動物実験の評価には、マウス抜歯窩モデルおよびマウス頭蓋骨欠損モデルを用い、移植した細胞による骨再生の組織学的およびマイクロ CT観察を行う。マウス抜歯窩モデルではマウスの上顎第一、第二、第三大臼歯を抜歯し、同部の抜歯窩を連続するように骨を削除する。マウスiPS細胞から神経堤細胞を介して分化誘導した骨芽細胞様細胞を抜歯窩に移植し、1~3週間後に抜歯窩を含む組織を摘出し、抜歯窩の治癒を組織学的に評価する。立体的な骨の形成状態及び骨密度は、マイクロ CTを用いて定量的に解析する。また、ラット頭蓋骨モデルではマウスiPS 細胞から神経堤細胞を介して分化誘導した骨芽細胞様細胞を免疫不全ラットの頭蓋骨欠損部に埋入し、3~5週間後に頭蓋骨を摘出する。骨再生を組織学的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に行う予定であった分化能評価が、次年度に移動したため、試薬代として差額が生じた。 次年度に予定している分化能評価のための試薬代として使用する予定である。
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