研究課題/領域番号 |
17K17157
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
高市 敦士 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 助教 (30707047)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 積層造形 / 異方性 / 疲労強度 / Co-Cr合金 |
研究実績の概要 |
近年レーザー積層造形(SLM)法が,新たな歯科補綴装置製作プロセスとして期待されている.しかし,SLM法は造形過程での急激な熱勾配に起因した残留応力による疲労強度が低下する問題や造形方向によって機械的性質が異なる異方性の問題が指摘されている.本研究は造形体の異方性を制御し機械的性質の等方化を目的とした最適な熱処理条件を解明することを目的とする. 積層造形装置EOSINT M280とCo-Cr合金粉末MP1を用いてダンベル型引張試験片の製作を行い組織および機械的性質の評価を行った.熱処理はアルゴン雰囲気下で係留温度を750℃,900℃,1050℃,または1150℃,係留時間を6時間に設定し,熱処理を行った. 熱処理後の試料では,熱処理温度が高くなるにつれ,0.2%耐力およびビッカース硬さが低下し,伸びが増加することが明らかとなった.熱処理後の試料において多くの析出物が粒内および粒界に観察され,EDS分析結果から析出物はσ相およびカーバイド相と同定された.また,XRD分析結果から熱処理前の試料はFCC相のみで構成されていたが,熱処理後ではHCP相も観察され,HCP相の割合は熱処理温度が高くなるにつれ低くなった.EBSD分析結果では,750, 900, または1050℃の熱処理後では比較的高いKernel Average Misorientation (KAM)値が計測され,残留ひずみが十分解放されていないことが示唆された.一方,1150℃の熱処理後では等軸状の結晶粒が観察され,低いKAM値を示し、十分な残留応力緩和には1150℃の熱処理が有望であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りに進行している。熱処理条件の選定が終えられたので今後は疲労強度と適合性の評価を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り順調に進行しているので予定通り行っていく。熱処理装置の調子が悪い時があるため他の装置での熱処理が可能かどうかも併せて検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は一つのサンプルの解析に予想以上に時間がかかり、予定していた造形回数を下回り、予定していた時期よりCoCr合金粉末購入が遅れた。そのため、次年度に積層造形やCoCr合金粉末の追加購入を行うこととした。
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