研究実績の概要 |
近年レーザー積層造形(SLM)法が,新たな歯科補綴装置製作プロセスとして期待されている.しかし,SLM法は造形過程での急激な熱勾配に起因した残留応力によ る疲労強度が低下する問題や造形方向によって機械的性質が異なる異方性の問題が指摘されている.本研究は造形体の異方性を制御し機械的性質の等方化を目的 とした最適な熱処理条件を解明することを目的とする. 前年度には 積層造形装置EOSINT M280とCo-Cr合金粉末MP1を用いて製作したコバルトクロム合金の組織の評価を行い1150°Cの熱処理を施すことで残留応力緩和と結晶構造の等軸化が達成されることが明らかとなった. 本年度は1150℃の熱処理を施したクラスプ形状の疲労試験片を用いて疲労試験を行った.その結果、破断までに要する回数は熱処理を施さない試料では造形方向により優位に異なる一方で熱処理後には造形方向による有意差は認められなかった.また熱処理時間が長くなると結晶粒間の析出物が粗大化し疲労強度が低下することが明らかとなった.一方で引張試験形状の試験片を用いた疲労試験では熱処理により疲労強度の顕著な向上が認められたものの造形方向による差は残存することが明らかとなった。これらの違いは試験形状のサイズ、積層回数に起因している可能性が考えられる。形状が大型の引張試験片では積層回数が大きく各層に内包される欠陥のリスク頻度がクラスプ試験片に比べて大きいため造形方向による違いが残存した可能性が考えれられる。
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