研究課題/領域番号 |
17K17159
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
駒ヶ嶺 友梨子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (50613692)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マルコフモデル |
研究実績の概要 |
本研究は日本人の無歯顎患者に対して,全部床義歯,1本インプラント支持型可撤式義歯(1-IOD),2本インプラント支持型可撤式義歯(2-IOD)により欠損補綴を行った場合の装着後15年間の費用対効果を,臨床データに基づいたマルコフモデル構築とモンテカルロ法によるシミュレーション分析により明らかにすることを目的とする.研究計画としては,文献の体系的レビュー,マルコフモデルの構築,移行確率・費用・治療効果指標などの費用対効果分析に必要なデータの算出,モンテカルロ法による確率的感度分析,費用対効果受容曲線の描記といった手順を経て,最終的に3種類の治療法に対する15年間の費用対効果を明らかにする.本研究により,無歯顎患者に対する費用対効果の高い治療法が明らかになれば,限られた医療資源の中でより効率的に患者利益を得られる治療方法の選択が可能となり,医療費の削減にもつながると考えられる.データは,本研究代表者が所属している東京医科歯科大学高齢者歯科学分野が実施している無歯顎患者を対象とした下記の臨床試験の臨床データ(2014年より実施されている全部床義歯製作に加えて簡便な栄養指導を行う群と行わない群での比較を行うパラレルデザイン型の無作為化比較臨床試験(CD-RCT),2015年より実施されている1-IODと全部床義歯の比較を行うクロスオーバーデザインの無作為化比較臨床試験(1IOD-RCT),2013年より実施されている2-IODのインプラント即時荷重と通常荷重の比較を行うパラレルデザインの無作為化比較臨床試験(2IOD-RCT))を使用するため,今年度はこれらの臨床試験の継続的な実施と,費用対効果分析に必要なパラメータ調査を引き続き行った.具体的には追跡期間中に発生し得る偶発症の発生率,治療効果指標,費用の調査を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,文献の体系的レビュー,マルコフモデルの構築,移行確率・費用・治療効果指標などの費用対効果分析に必要なデータの算出,モンテカルロ法による確率的感度分析,費用対効果受容曲線の描記,3種類の治療法に対する15年間の費用対効果の算出といった順番で計画を遂行していく予定であるが,現在までは,昨年度に引き続き,臨床試験(2014年より実施されている全部床義歯製作に加えて簡便な栄養指導を行う群と行わない群での比較を行うパラレルデザイン型の無作為化比較臨床試験,2015年より実施されている1-IODと全部床義歯の比較を行うクロスオーバーデザインの無作為化比較臨床試験,2013年より実施されている2-IODのインプラント即時荷重と通常荷重の比較を行うパラレルデザインの無作為化比較臨床試験)の継続的な実施と,追跡期間中に発生し得る偶発症,口腔関連QoL(OHIPEDENT),義歯製作時や追跡期間中の費用について,現時点で評価の終了しているデータの後ろ向き調査や,マルコフモデルの構築のための文献調査を行った.文献調査は,文献データベースを用いて,国内外で報告されている全部床義歯,1-IOD,2-IODの医療経済評価や臨床研究についての体系的なレビューを行い,それぞれの治療法に対して日本で一般的に行われている臨床手技や,メンテナンス期間に発生し得る偶発症などを調査した.それらのデータを基に,今年度はマルコフモデルの構築を開始した.
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今後の研究の推進方策 |
今後はCD-RCT,1IOD-RCT,2IOD-RCTについて,臨床試験の継続的な実施と,費用対効果分析に必要なパラメータ調査(追跡期間中に発生し得る偶発症,口腔関連QoL(OHIP-EDENT),義歯製作時や追跡期間中の保険医療費,非保険医療費,生産性損失について)を行う.また,全部床義歯,1-IOD,2-IODの医療経済評価や臨床研究に関する文献,報告書から本研究のマルコフモデルの構築を完了させる.さらに,費用対効果指標,増分効果比(ICER)の算出(費用増加分を治療効果指標の増加分で割り算し,治療効果指標1単位あたりの増分費用である増分効果比を算出する),モンテカルロシミュレーションを用いた確率的感度分析(確率的感度分析によって,モデルに組み込まれたパラメータ(イベント発生率,費用,効果指標)の持つ不確実性が分析結果に及ぼす影響を数値的に解析する)を行い,最終解析を完了させる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は主にさらなる文献レビューや前向きのデータ調査を行なっており,またマルコフモデルの構築についての考察や解析使用ソフトの再度の吟味などを行なっており,次年度使用額が発生してしまった.今後の使用計画としては,追加の臨床研究時に発生する技工の費用,材料の費用に使用や研究成果の学会発表などに使用する予定である.
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