日本人の無歯顎患者に対して,全部床義歯,1本インプラント支持可撤式義歯(1-IOD),2本インプラント支持可撤式義歯(2-IOD)により欠損補綴を行った場合の装着後15年間の費用対効果分析を行うものである.まずは文献を参考に国内外で報告されている全部床義歯,1-IOD,2-IODの医療経済評価や臨床研究についての体系的なレビューを行った上で,それぞれの治療法に対して日本で一般的に行われている臨床手技や,メンテナンス期間に発生し得る偶発症などを反映した,マルコフモデルの構築を行った.次に費用対効果分析に必要なパラメータ調査のうち,偶発症の発生率と治療指標効果については文献レビューを行なった.インプラントオーバーデンチャーに使用したアタッチメントや荷重方法,偶発症など論文ごとに異なっており,全ての値を利用した解析を行うことは困難であったため,最初は,偶発症の選択肢が十分で且つ経過年数ごとの偶発症の発生率がきちんと明示され,さらに経過年数ごとの治療指標効果もきちんと明示されていた論文1本を参考にした費用対効果分析を行うこととした.費用に関しては研究代表者の所属する大学付属病院で実際に使用されている料金を用いることとした.費用対効果分析にはTreeAgeを使用し,マルコフモデル構築から費用対効果分析までを行なった.結果は,1-IOD,2-IOD,全部床義歯の中では2-IODが一番費用対効果の良い治療であった.研究代表者はさらに偶発症の発生率,治療指標効果について臨床研究において得られた値も参考として解析を行なった.
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