我が国では要介護高齢者の増加に伴い介護食品の需要も高まっている.現在,介護食品は咀嚼障害を有する場合,「弱い力で噛める食品」,「歯ぐきでつぶせる食品」,「舌でつぶせる食品」といった食品の硬さにより分類されている.一方で,歯や顎堤あるいは舌といった口腔器官を用いて食品を圧搾する力を包括的かつ簡便に測定する方法は存在しない.本研究の目的は,舌圧プローブのバルーン部を試作疑似食品として,歯,顎堤,頬粘膜ならびに舌などの協調運動による食品圧搾力を測定するシステムを開発し,要介護高齢者の多様な口腔環境に適応可能な機能検査を新たに開発することを目的とした. 新規圧搾検査には舌圧検査で用いるプローブを疑似食品として「この風船(舌圧プローブのバルーン部)を食べ物だと思って口で潰して下さい」の指示の下,口腔内で潰すよう指示を行う.尚,加圧時間は舌圧検査と同様7秒間として,測定は3回行った. 平成29年度は,要介護高齢者17名に対して,残存歯数,咬合支持の有無,認知機能の指標としてMini-Mental State Examination,栄養の指標として簡易栄養状態評価表(MNA®-SF)およびBMI, タンパク質およびエネルギー摂取量の調査,ならびに舌圧検査および新規食品圧搾検査を実施した.また,区分2および3に相当する硬さのゼリーを用いて対象者に口腔内で潰すよう指示し,その可否についても調査した. 今後は対象者数を増やすとともに,摂取可能な食品と本検査法との関連およびその他要因について検討していく予定である.
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