研究課題/領域番号 |
17K17174
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
岩脇 有軌 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (10754624)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | チタン / 表面処理 / microRNA |
研究実績の概要 |
チタンと骨が結合するオッセオインテグレーションには骨芽細胞の接着・分化・増殖が関与していることが知られているが、その全ての分子機序が解明されているとはいえず、そこにはエピジェネティクス機構の一つであるmicroRNA(miRNA)の遺伝子発現調節が関与する可能性がある。本研究ではmiRNAがオッセオインテグレーションにおける骨機能変化のシグナル分子の一つであることを検証し、オッセオインテグレーション獲得の指標または促進させる薬剤標的としてのmiRNAの可能性を探ることを目的とする。 今回、まず3種類の各種表面処理されたチタンプレートを準備した。滑沢チタンプレートはチタンプレートを耐水ペーパーで研磨し作製した。サンドブラスト処理チタンプレートはアルミナサンドブラストをチタン表面へ行い作製した。酸エッチング処理チタンプレートは硫酸溶液中で表面処理して作製した。各試験片の表面粗さはポータブル表面輪郭ゲージSRT-6223にて測定し、酸エッチング処理、サンドブラスト処理、滑沢チタンプレートの順に大きくなった。 次に各試験片上に骨芽細胞様細胞MC3T3-E1を24時間、48時間、72時間培養し、MTT Assayにて細胞増殖への影響を検討した。コントロールはプラスティックシャーレ上で同様に培養したものとした。24時間における細胞増殖にはほとんど変化は認められなかったが、48時間、72時間と時間が経過するにつれ表面粗さが大きい試験片上での細胞増殖が抑制された。 また、各試験片上で培養したMC3T3-E1におけるmiRNAの発現状況を網羅的に解析するため、MT3T3-E1を各試験片上にて24時間培養後、Total RNAを抽出した。抽出したTotal RNAは、NanoDropおよびバイオアナライザーにて分析を行い、マイクロアレイ解析実施前の品質評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、異なる3種類の表面処理を行ったチタン試験片を作製した。表面処理は、表面を滑沢に研磨したものに加え、オッセオインテグレーションの獲得が有利になると報告されているサンドブラスト処理と酸エッチング処理とした。このチタン表面上でMC3T3-E1を培養したところ、表面粗さが大きな試験片では細胞増殖が抑制されることが確認できた。また、同様にチタン表面上でMC3T3-E1を24時間培養しsmall RNAを含むTotal RNAを抽出した。このTotal RNAを用いてマイクロアレイ解析を実施する予定であるが、Total RNAの品質に問題がないところまで確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずマイクロアレイ解析を行い各チタン試験片上で培養したMC3T3-E1におけるmiRNA発現についての網羅的解析を行う。その後、コントロールと滑沢チタン間で発現変動が認められたmiRNAにおいて、さらに滑沢チタンとサンドブラスト処理チタン間または酸エットング処理チタン間で発現変動が認められるものを各々RT-qPCRによって発現変動の確認を行う。これより、マイクロアレイ解析およびRT-qPCR両者において発現変動が認められたmiRNAをオッセオインテグレーションの獲得・促進に関与するmiRNAと仮定し、標的遺伝子候補をmiRDBやTarget Scanなどのデータベースを用いて検索・予測する。そして、予測された標的遺伝子候補が実際に変動を認めるかRT-qPCRやWestern Blotで確認を行っていく。 加えて、各種表面処理された試験片上でMC3T3-E1細胞培養後に染色を行い、表面処理が細胞分化に与える影響についても検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度における研究では試験片の作製や表面処理において支出が必要だった一方で、機材・試薬などは現在所有しているもので実験が可能であった。次年度使用額分については、次年度の研究において大きな支出が必要であるマイクロアレイ解析の費用に使用する予定である。
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