研究課題/領域番号 |
17K17175
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松浦 由梨 九州大学, 歯学研究院, 特別研究員 (80778837)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
口腔内の硬軟組織難治性疾患は歯科補綴治療を妨げて口腔内のQOLを著しく阻害する。本研究ではその中でも薬剤関連顎骨壊死(medication related osteonecrosis of the jaw: MRONJ)に注目し、その治療法について検討するものである。研究代表者は間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)を用いた細胞治療について研究を続けてきた。その研究成果として我々はMRONJの病態と治癒にMSC内のミトコンドリアの変化が大きく影響していることを示した。 このことからミトコンドリアの直接的な投与が超高齢社会となり罹患率の上昇が予想されるMRONJに対する治療の一つの可能性として検討することで、MRONJに対する治療法として細胞内小器官としてのミトコンドリアを直接投与することでの治療の可能性を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では正常な個体のMSCとMRONJモデルから単離したMSCの性質の違いを利用し、ミトコンドリアの交換がMSCの性質を変えることを示すことにあったが、いくつかの実験系でそれらを明らかに、その可能性を示した。 ちなみにMSCの全身投与が有効な手段であること、その治療のメカニズムはMSCによるMSCの治療であること、さらにこのMSC治療にはミトコンドリアの交換が大きく関与していることを示した。 この一連の研究はすべて、モデル作製が困難なMRONJモデルマウスを使用しており、我々の研究室のオリジナルと言える
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今後の研究の推進方策 |
予想される結果として、ミトコンドリアはMRONJモデルマウスから採取したMSCを治療することが出来ると考える。ただしミトコンドリア単体ではMSCに取り込まれないなど、輸送ケースとしてMSCはミトコンドリアの輸送に必要なのかも知れない。その際は全身投与前のMSC内のミトコンドリアを様々に交換することで治療効果を自由に調節することが出来るかも知れない。 この考えは、MRONJ治療だけでなくあらゆる疾患の治療に役立つものであり、歯科から医学全体に発信できる画期的な治療法となるかもしれない。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はMSCはサイトカイン分泌による免疫細胞との関与が報告されている一方で、近年になって周囲の細胞と直接的なコンタクトを介しても影響を与えている可能性が示唆された(T. Wang 2006, M. Loibl 2014)。さらに、MSCは共培養下において、傷害を受けた細胞にミトコンドリアを供給することが明らかにされた(T. Ahmad 2014)。これを受けて、本解析ではMSC同士の相互作用としてミトコンドリアの動向に着目した。投与される側であるホストの体内環境を模倣するため、ホスト体内に存在すると見立てたMSC(ホストMSC)を先に培養し、投与されたMSCと見立てたドナーMSCを投与し、MSC間における相互作用を観察するものである。 実験計画は概ね順調に進んでいるが、動物実験が予定よりわずかに良い結果を得ることが出来た。試薬類が予想より少なく10万円ほど次年度に繰り越すことが出来た。
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