口腔内の硬軟組織難治性疾患は歯科補綴治療を妨げて口腔内のQOLを著しく阻害する。本研究ではその中でも薬剤関連顎骨壊死(medication related osteonecrosis of the jaw: MRONJ)に注目し、その治療法について検討するものである。申請者は間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)を用いた細胞治療について研究を続けてきた。その研究成果として我々はMRONJの病態と治癒にMSC内のミトコンドリアの変化が大きく影響していることを示した。超高齢社会となり罹患率の上昇が予想されるMRONJに対する治療の一つの可能性としてミトコンドリアの直接的な投与が有効で実現可能であるかを検討していくものであった。 実験内容としては、「薬剤関連顎骨壊死に対する間葉系幹細胞のミトコンドリアリプレイスの有効性の検討」である。 申請者は2年間の研究期間で、MSCによるMRONJの治療メカニズムをわずかであるが解析するができた。当初はMSCの局所的な治療かと予想していたが、全身投与されたMSCによって疾患モデル内のMSCが治療されている可能性が示唆された。さらに研究を進めていくうちに、そのMSCによるMSCの治療にはミトコンドリアが関与している可能性が示唆された。以上の研究成果から、MSC同士のミトコンドリア交換(リプレイス)がMSCの性質を変えるという結論に達した。 以上より、本研究ではMRONJ治療には全身投与されたMSCのミトコンドリアが重要である可能性があることを示し、さらにMRONJに対する治療法として細胞内小器官としてのミトコンドリアを直接投与することによる治療の可能性を探る。
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