研究実績の概要 |
本研究では、骨伝導性の高い材料を、溶解性、骨吸収性が高い材料で被覆することで、短期・長期的に骨形成を促進する新規材料の創製を目的とする。リン酸カルシウムをベースとした水酸アパタイト、β型リン酸三カルシウムは骨伝導性が高く、骨再建を目的とした人工骨補填材として臨床応用されている。また、平成30年度末には炭酸アパタイト顆粒が承認、販売された。一方で、学術的には溶解性の高いカルシウム系セラミックスを含んだ人工骨補填材は、初期の骨伝導性が高いことを見出している。そこで、溶解度の異なるカルシウム系セラミックスを有する二相構造の人工骨補填材を創製できれば、埋入初期・長期に高い骨伝導性を発揮する新規材料となると考えた。 今年度は二相性顆粒の核として用いる炭酸アパタイト顆粒、β型リン酸三カルシウム顆粒をそれぞれ調製し、それぞれの顆粒を硫酸ナトリウム溶液に浸漬して顆粒表面を硫酸カルシウムで被覆することを検討した。β型リン酸三カルシウム顆粒はβ型リン酸三カルシウム粉末を30 MPaで圧粉した後、1,100℃で焼結し、得られた焼結体を粉砕、300-600 μmでふるいにかけた。得られたβ型リン酸三カルシウム顆粒を0.25, 0.375, 0.5 mol/Lの硫酸水素ナトリウム溶液に浸漬して1, 3, 5, 7日間70℃で静置した。浸漬後、粉末X線回折により顆粒表面が硫酸カルシウム二水和物で被覆されていることを確認し、その被覆量は硫酸水素ナトリウム溶液の濃度に依存して増加していた。炭酸カルシウム顆粒についても、β-TCP顆粒と同様に硫酸水素ナトリウム溶液に浸漬することで表面を硫酸カルシウム二水和物で被覆できることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は二相性顆粒の調製条件を引き続き検討し、同時に、二相性顆粒の生物学的評価を行う。カルシウムイオンの遊離は初期の骨形成に大きく寄与する可能性がある。そこで、まず、調製した顆粒からのカルシウムイオンの遊離評価を行う。具体的には、調製した二層性顆粒を擬似体液もしくは生理食塩水中に浸漬して37℃で0.5, 1, 3, 7, 14日後のカルシウムイオン溶出量をICP発光により評価する。溶液中への顆粒の浸漬期間は二相性顆粒によって異なる可能性が高く、カルシウム溶出状況により判断し、その都度検討する。 次に、二相性顆粒が骨芽細胞の形態、活性化に与える影響を評価する。近郊系ラットの大腿骨から調製した骨髄細胞懸濁駅を骨芽細胞様細胞に分化して二相性顆粒状に播種し、培地中で一定期間培養する。初期細胞接着をMTTアッセイ、SEM観察により評価するとともに、継時的な細胞増殖をMTTアッセイにより評価する。また、細胞の分化の指標マーカーとしてアルカリホスファターゼ活性、タイプIコラーゲン合成量、オステオカルシン産出を測定、細胞レベルでの骨電導性を評価する。これらの評価は顆粒状での評価が難しい場合、ブロック上のサンプルを用意して表面を異なる材料で被覆し、二相性ブロックを用いて評価する。
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