研究課題/領域番号 |
17K17177
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
土谷 享 九州大学, 歯学研究院, 助教 (90722710)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人工骨補填材 / バイオマテリアル / 二相性顆粒 |
研究実績の概要 |
本研究では、骨伝導性の高い材料を、溶解性、骨吸収性が高い材料で被覆することで、短期・長期的に骨形成を促進する新規材料の創製を目的とする。リン酸カルシウムをベースとした水酸アパタイト、β型リン酸三カルシウムは骨伝導性が高く、骨再建を目的とした人工骨補填材として臨床応用されている。また、平成30年度末には炭酸アパタイト顆粒が承認、販売された。一方で、学術的には溶解性の高いカルシウム系セラミックスを含んだ人工骨補填材は、初期の骨伝導性が高いことを見出している。そこで、溶解度の異なるカルシウム系セラミックスを有する二相構造の人工骨補填材を創製できれば、埋入初期・長期に高い骨伝導性を発揮する新規材料となると考えた。 今年度は二相性顆粒の組み合わせを検討し、一部の二相性顆粒については予定より先行して動物実験を開始した。二相性顆粒については、これまで炭酸アパタイト、β型リン酸三カルシウムをコアとしていたが、それ以外の組み合わせとして石膏をコアとし、表面をアパタイト被覆することを試みた。石膏は溶解性が非常に高いが、表面をアパタイトで被覆することで溶解性を抑制し本研究の目的を達成することができる。300-600 μmに調整した石膏顆粒をリン酸ナトリウム水溶液に浸漬し、20℃、40℃、60℃で7日間反応した。X線回折、赤外分光法、エネルギー分散型X線分光法によりいずれの条件においても石膏顆粒表面をアパタイトが被覆していることを示し、また、60℃で調製したアパタイト被覆石膏は顕著に溶解性を抑制していることを示した。また、動物実験においてアパタイト被覆石膏が新生骨形成を促進することを示し、その成果をCeramics International誌に投稿・掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
炭酸アパタイト表面に硫酸カルシウムを被覆した二相性顆粒は調製条件を決定し、一部動物実験を既に開始している。また、リン酸水素カルシウム二水和物被覆した炭酸アパタイト顆粒についても動物実験を行う準備が整っている。また、2018年度中に二相性顆粒の一部の成果については動物実験まで終えて国際誌に掲載されており、当初の計画以上に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度はこれまでに調製条件を決定した二相性顆粒の動物実験を主に進める。具体的には、兎大腿骨に骨欠損を作成して二相性顆粒を充填し、マイクロCT、病理組織学的解析により新生骨形成量を評価する。新生骨形成が促進された場合は細胞実験、顆粒の溶解速度の観点から新生骨形成を促進する作用機序を解明する。 また、二相性顆粒の一部の組み合わせによっては、表面被覆した結晶が顆粒表面に強く接着しないといった問題が判明してきている。この組み合わせについては反応方法を最適化して、動物実験を行う予定である。
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