本研究では、骨伝導性の高い材料を、溶解性、骨吸収性が高い材料で被覆することで、短期・長期的に骨形成を評価する新規材料の創製を目的とする。リン酸カルシウムをベースとしたハイドロキシアパタイト、β型リン酸三カルシウムは骨伝導性が高く、骨再建を目的とした人工骨補填材として臨床応用されている。また、平成30年度末には炭酸アパタイト顆粒が承認、販売された。一方で、学術的には溶解性の高いセラミックス系骨補填材は、初期の骨伝導性が高いことを見出している。そこで、溶解性の異なるカルシウム系セラミックスを有する二相構造の人工骨補填材を創製できれば、埋入初期・長期に高い骨伝導性を発揮する新規材料となると考えた。 本年度は、最新の人工骨補填材である炭酸アパタイト表面に、溶解性の低いセラミックスを被覆することを試みた。まず、炭酸アパタイト顆粒と酸性リン酸カルシウム溶液を混合することでβ型リン酸三カルシウム顆粒のようにリン酸水素カルシウムが被覆し、硬化するかを確認した。炭酸アパタイト顆粒についてもβ型リン酸三カルシウムと同様にリン酸水素カルシウム二水和物が表面に被覆し、炭酸アパタイト顆粒は硬化したが、硬化体の機械的強度はβ型リン酸三カルシウムの場合よりも低かった。炭酸アパタイト顆粒の場合は酸性リン酸カルシウム溶液と練和した際に大量に気泡が発生しており、炭酸アパタイト顆粒表面から析出したリン酸水素カルシウム二水和物が気泡により脱離したためだと考えられる。 次に、これまで調製した二相性顆粒をうさぎ大腿骨に埋入し、それぞれの骨形成量を評価した。硫酸カルシウムを修飾したβ型リン酸三カルシウムで特に骨形成量の増大が認められ、以上の検討により二相性顆粒の有効性が実証された。 本研究については現在2報さらに論文を執筆しており、近日中に投稿が完了する予定である。
|