研究課題/領域番号 |
17K17178
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三枝 真依子 九州大学, 歯学研究院, 特別研究員 (30792668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アスピリン / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
近年、幹細胞(iPS-cells/MSCs)は自己免疫疾患(Yamaza 2010; Ruili 2011)や癌(Atsuta 2013)の治療などにも応用され、薬物治療のような副作用のない万能に近い理想の治療法として注目されている。我々は今までの一連の幹細胞研究で、治療結果に大幅なバラツキが出ることに気付いた。これは投与される個体だけでなく採取される個体(疾患の有無、年齢など)の影響とされるが、理由は不明である。そこで治療結果の安定化を目指して研究を進めることとなった。 幹細胞(iPS-cells/MSCs)は優れた増殖能、分化能から医科/歯科領域における重要な再生治療の選択肢として研究されている。その高い有効性から臨床応用が現実となる一方で、幹細胞による治療効果の不安定さが新たな問題となっている。これは臨床的にも研究的にも見られる現象であり、治療効果の明らかな大小、逆に症状を悪化させることで示される。本研究チームでは、この現象の現象を投与される幹細胞の「個性」と考え、幹細胞に対するアスピリン処理によっていかなる幹細胞にも再生治療に耐えうる能力を賦活させ、能力を一定化することで、予知性の高い治療を目指す。治療効果の安定性については幹細胞治療を進めていく上でクリアーしなければならない問題であり、この研究によって得られる成果は歯科のみでなく幹細胞を用いたあらゆる再生・細胞治療の基盤になると期待する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、幹細胞治療で見られる効果のバラツキ(治療効果の大小だけでなく病状の悪化も含む)を投与する幹細胞に対するアスピリンによる前処理で最小限に留めることを目的とする。①「異常化/正常化」幹細胞の選択採取、②アスピリン投与による細胞レベルの効果、③病態モデルラットに対する全身投与治癒効果の評価、加えて④投与細胞数をコントロールし効果の違い、⑤結果として生じる肺組織への副作用などを比較する。これによりアスピリン処理された幹細胞の有効性を評価する。尚、これら実験スケジュールは現在の続きとして2年間の予定であるアスピリンによる前処理で幹細胞の活性を高め、少ない細胞数で安定した治療効果が得られることを目指す。つまり異常な幹細胞を採取しアスピリン処理して、非処理群と治療効果を比較したが、その結果が思っていた以上に明らかな結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
幹細胞を活性化することで、「治療効果のバラツキを最小限に留め(大小の差はあるものの)確実な結果を得る」「治療のため投与する細胞数を最小限に留め患者の侵襲を抑える」ためにアスピリンを使うことが特色であり独創的な点である。アスピリンによる幹細胞活性の促進効果は癌細胞などを用いた我々の過去の研究から明らかである(Atsuta 2013)。幹細胞の活性促進のためのアスピリン投与は共同研究を行っているShi教授のラボで近年注目しはじめたものであり、世界中のいかなるラボよりも研究実績がある。そのため得られた結果には信頼性があり、今後の研究の基盤となりうる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の研究内容として、歯周外科時に歯周病罹患患者(「異常化」幹細胞が存在)から、またはインプラント治療時に歯周病治癒患者(「正常化」幹細胞が存在)からヒト口腔粘膜上皮を採取すること。さらに「異常化」幹細胞の存在を間葉系幹細胞(以下MSC)により証明するため、通例通り培養環境条件をコントロールすることでのみで幹細胞を培養することであった。これらの結果が予定より容易に得られたため、今回10万程度の繰り越し金が発生した。
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