研究課題/領域番号 |
17K17179
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
冨田 陽子 九州大学, 大学病院, 医員 (60778869)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨細胞 / インプラント周囲骨 / 三次元培養 / メカニカルストレス |
研究実績の概要 |
口腔インプラント治療では、咬合、咀嚼の機能回復のため、インプラント体を通じて伝えられる咬合力に適正に応答してインプラント周囲骨代謝を行うことが求められる。しかしながら、咬合力を受容した際のインプラント周囲骨動態については未解明な点が多い。そこで、患者の口腔内においてインプラントが長く機能するための骨代謝メカニズムを解明することを目的として研究を進めている。骨における応力感知細胞(メカノセンサー)としては、骨細胞が注目されている。骨細胞は、骨組織内に骨細胞突起を張り巡らせ、三次元ネットワーク構造を構成し、応力の感知を行いやすいシステムを構築している。そこで、骨細胞に注目し解析を進めた。 細胞実験においては、骨細胞の三次元ネットワーク構造を再現したモデルを作製した。骨細胞様細胞株の三次元ゲル包埋培養を行い、インプラント体の材料であるチタンを用いたプレートを用いて反復刺激を付与した。刺激を付与すると、骨細胞死に関連する骨吸収を誘導する反応を認めた。骨細胞死は骨リモデリングのトリガーとなると考えられており、今後、骨形成に関与する因子についても解析を進めることで、骨吸収、骨形成のバランスを解析していく予定である。 動物実験においては、ラット顎骨に純チタン製インプラントを埋入したモデルを作製した。インプラント体への咬合負荷の様式を変えたモデルを作製し、検討を行った。今後、おのおののモデルについて標本作製を行い、免疫組織学的検討や遺伝子発現解析を行い、咬合力と骨代謝の関係について解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞実験においては、刺激装置をインキュベーター内に設置している装置の構造上、コンタミネーションが生じやすく、十分なn数を確保するのに至らなかったため、継続して反復実験を行っていく必要がある。コンタミネーションについては、装置の構造を工夫することにより、頻度を減らすことに成功した。 また今年度後半においては産前、産後の休暇を取得し、研究を進めることができなかった。次年度その分の研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験、細胞実験ともに、手技は確立しつつあるので、今後は解析に力を入れていく。 動物実験においては、非脱灰凍結切片の作製手技を習得したため、新たにレーザーマイクロダイセクションを用いた、局所的な遺伝子発現解析を行い、よりインプラント周囲に限局した反応を解析していく。また、ALP活性等、骨形成に関与する因子についての解析を進めていく予定である。 細胞実験においては、三次元培養の利点を活かし、レーザー顕微鏡を用いた三次元解析を進めていく。細胞突起の構造について三次元的に解析することで、刺激の伝達機構等について理解を深めることができると考えている。 また、最終的に動物実験、細胞実験の結果を総合して、インプラント周囲骨動態について解明することを最終目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、12月~3月にかけて産前、産後休暇を取得し、研究を行うことができなかったことが挙げられる。そのため研究計画を一年延長し、研究調書の内容を進めていく予定である。今年度は初年度ということもあり、モデルの検討等に費やした時間が長かったため、次年度以降n数を確保して実験を進めていく予定である。また次年度はレーザー顕微鏡の使用料等、装置使用の経費がかかる予定である。また、取得したデータの解析用ソフト等の整備も行う予定である。 また、本年度は国内学会発表のみであったため、次年度以降は国際学会での発表、また国際学会誌への投稿を進めていく。
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