口腔インプラント治療の最大の目的は咬合、咀嚼の機能回復であり、インプラント周囲骨が咬合力というメカニカルストレスに適正に対応することが求められる。骨組織における応力の管理には骨細胞が重要な役割を果たすことが知られており、骨細胞は骨芽細胞や破骨細胞の機能を調整するとも考えられている。そこで本研究においては咬合負荷時のインプラント周囲骨代謝に関して解析を行った。 最終年度においては、咬合荷重の負荷形態を変えたラット顎骨インプラント埋入モデルを作製し解析を行った。抜歯後の治癒待ち期間、インプラント埋入後オッセオインテグレーションを得るための待時期間を置いた上で、インプラント体に咬合過重の負荷を開始した。隣在歯と比較し、明らかに上部構造を高くした群(過重負荷群)においては、早期の上部構造の脱離や、早期のインプラント体脱離を認めた。隣在歯と比較し、上部構造を同程度の高さに設定した群(通常負荷群)においては、過重負荷群と比較し、インプラント脱離時期が遅く、脱離するインプラントも少ない傾向を認めた。また、通常負荷の状況から、1ヶ月後に過重負荷に変えたモデル(負荷変更モデル)では、インプラントの脱離は認めなかった。これらの結果よりインプラントに咬合過重を開始した際には、初期の咬合調整の重要性が示唆された。今後、継続した解析を行い、長期経過における骨質の変化や骨細胞の機能に関しても解析を行い、長期に安定したインプラント治療への示唆を得ていきたい。
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