研究課題
歯冠修復物において、表面硬度や弾性係数などの機械的性質は生体適合性の観点から重要である。しかし、既存の実用的な歯科材料では、天然ヒトエナメル質 と同等の表面硬度と弾性係数をもつものはない。そこで本研究では、エナメル質と同等の機械的性質(表面硬度と弾性係数)をもつ人工エナメル質を開発することを目的とする。さらに、人工エナメル質の強度、接着耐久性、審美性なとどの実用性を付与することで、高機能かつ実用的な歯科材料へと発展させる。著者らは、目標を達成するため、複合材料のナノ構造に着目した。一般的なコンポジットは、無機フィラーがマトリックスレジンに分散したいわゆるフィラー分散構造をもつ。フィラー分散構造の複合材料は、実用歯科材料として多く使用されているものの、その表面硬度と弾性係数はエナメル質の1/4程度しかない。そこ で、本研究では、セラミックスとレジンからなるナノ共連続構造を形成することでエナメル質と同等の表面硬度と弾性係数をもつ新素材の開発に取り組んだ。1 年目は、シリカとポリメチルメタクリレート(PMMA)からナノ共連続構造を形成することに成功した。2年目は、シラン処理を作製工程に導入することで、曲げ強さを向上させることに成功した。本年度は、審美性の向上とCAD/CAMシステムを用いた加工性について検討した。審美性に関しては、材料に酸化チタンなどの金属酸化物を添加することで、透明性や色調を制御できることを見出した。加工性については、既存のCAD/CAMシステムを用いて切削加工したところ、チッピングなどの不良は起こらずクラウンが作製できた。以上のことから、新素材は優れた審美性と高い被削性を有することが明らかとなった。
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Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical Materials
巻: 101 ページ: 103441~103441
10.1016/j.jmbbm.2019.103441