研究実績の概要 |
睡眠中の運動障害と定義される睡眠時ブラキシズム(SB)は,覚醒時の最大咬合力を超える力を伴うものや数分間持続するものがあり,顎口腔系に破壊的に作用する.歯科の二大疾患である齲蝕や歯周病と同様に,近年歯科治療予後を左右する重要なリスクファクターとして明確に位置づけられている.しかし,チェアサイドでの正確な臨床診断方法は確立されておらず,SBの筋活動には様々なパターンがあることが示されているが,臨床的にはこれらの多寡を考慮せず一括りに診断され,画一的な対応がなされているため,正確な診断・治療がなされていないのが現状である.以上を踏まえ,本研究では従来のSB臨床徴候に加えて新しい知見などによる追加項目による診査を行い,睡眠ポリグラフ検査(PSG)により得られるSBイベントとの関連性を調査することで,SBの症型分類が可能な新たな臨床診断基準を策定することを目指す。 令和元年度は昨年度に引き続き,被験者動員と睡眠時ブラキシズムレベルの評価を行った。咀嚼筋筋活動測定は、咬筋EMGチャンネルを付加した脳波記録簡易睡眠検査装置Sleep Profilerを用いて行い、睡眠時ブラキシズムレベルの評価(ベースライン測定)を行った。この際、臨床診断基準を満たすが、二次スクリーニングである睡眠中の咀嚼筋筋活動測定で、Lavigneらの診断基準(Lavigne, Rompre and Montplaisir 1996)を満たさない者は除外とした。上記データを用いて,各種臨床徴候とSB筋活動の比較検討を行った. その結果, 咬耗はgrindingを反映するphasicな活動,睡眠同伴者の指摘は音を伴うphasicな活動,および起床時の咀嚼筋疲労感はclenchingを反映するtonicな活動にそれぞれ関連づけられ,各診断基準が異なるSB episodesを反映することが示唆された.
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