研究実績の概要 |
顎口腔系に破壊的な作用をもたらす睡眠時ブラキシズムは補綴歯科治療の予後を左右する重要なリスクファクターであるが、その発症メカニズムは明らかでな い。本研究では、研究代表者が過去に示した遺伝子多型リスクアレルを指標に、睡眠時ブラキシズム特異的 iPS細胞を樹立して神経細胞を誘導してその表現型の 電気生理学的特性を明らかにすることを目的としている。 2017年度までの時点で、セロトニン2A受容体遺伝子(HTR2A)のrs6313(T102C)の一塩基多型(SNP:single nucleotide polymorphism)の解析を行い、睡眠ポリグラフ(PSG)検査を用いた睡眠時ブラキシズムの診断とリスクアレルであるC alleleの有無が合致する被験者(睡眠時ブラキシズム群3名、コントロール群3 名)を選定してiPS細胞から神経細胞を分化誘導した。睡眠時ブラキシズム患者由来の神経細胞と、コントロール群由来の神経細胞からそれぞれ神経細胞を分化誘導し、ホールセルパッチクランプを行った。まずコントロール由来のiPS細胞を用いて, 接着培養後31-111日における受動的パラメーター(静止膜電位, 膜抵抗, 時定数, 膜容量)を記録したところ, 一般的なニューロンの成熟過程として報告されているものと同様の傾向を認めた. また患者由来iPS細胞とコントロール由来iPS細胞それぞれから誘導したニューロンについて各パラメーターを比較検討したところ, 活動電位の頻度は負荷電流50pA以上で有意に増加し, コントロール株の約2倍の上昇を示し, 活動電位半減時間は有意に短縮していた.
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