研究課題/領域番号 |
17K17200
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
西村 貴子 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (70468908)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グラスアイオノマーセメント / ハイドロキシアパタイト |
研究実績の概要 |
本研究は,歯科用セメントであるグラスアイオノマーセメント(GIC)にハイドロキシアパタイト(HAp)を添加したアパタイトアイオノマーセメント(AIC)を試作し,その反応メカニズムを解明することを目的として行っている。 申請当初,AICの基材には優れたフッ素徐放能を有する高強度充填用GICであるFujiIX GP EXTRA(IX-Ex)用いてAICの化学的,物理的特性について評価していた。しかしながら材料の崩壊や粉液比による影響の評価にあたり,AIC基材の再検討を行った結果,シーラント用GICであるFuji IIIを用い,Hap粉末は多孔質で平均粒径約20umのHApを使用することに変更した。予備実験の結果よりHApの至適添加量は24wt%とし,物理化学的性質の再評価を行った。当該年度は,主に機械的強度(3点曲げ強さ,圧縮強さ,崩壊率)やフッ化物溶出能を測定し,IX-Exと同様の結果が得られた。また基材GICの粉液比およびHAp添加量を調整した試料群を作製し,それらの結果からHAp添加はGICの強度の向上に直接的に関与しているが,フッ化物イオン溶出の向上は,HApの作用ではなく,HAp添加量分だけGIC粉末量が減少しGICの粉液比が低下することが原因であることが示唆された。本研究結果については,国際および国内の学会において発表を行い,国内外の研究者らと議論することができた。さらに,GICと化学的な反応を示さないセルロースをGICに添加し,AICとともにその特性を比較し評価を行う計画であり,予備実験を行った。次年度に本実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基材となるGICをIX-Exを用いて行ってきたが,測定のためのサンプル作製に困難をきたし,再検討の必要性が生じた。しかしAIC基材をシーラント用GICであるFuji IIIを用いることで、問題は解決し予備実験よりFuji IIIに対するHApの至適添加量は24wt%という結果まで得られ,本実験に着手している。AICの機能性を評価することによりAIC中のHApの反応メカニズムを解明することを目的としているため、その評価として崩壊率についても当該年度に予備実験を行った成果を踏まえて,本実験を行い、また各種イオン溶出能についても検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
AIC基材をシーラント用GICであるFuji IIIの実験結果において,これまでに得られたAICの優れた性質を検討し、AICは歯質の脱灰抑制および再石灰化,中和作用・緩衝作用による生体親和性の向上,歯髄炎および歯肉炎の軽減,細菌付着およびプラーク形成の抑制,細菌の酸産生の抑制にどのように作用していくか、次年度はさらに検証実験を行うこととしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請当初,AICの基材には優れたフッ素徐放能を有する高強度充填用GICであるFujiIX GP EXTRA(IX-Ex)用いてAICの化学的,物理的特性について評価していた。しかしながら材料の崩壊や粉液比による影響に関して評価するにあたり,AIC基材の再検討を行った結果,シーラント用GICであるFuji IIIを用いることに変更したため,予備実験より再度行うこととなったが、以前から並行していた予備実験の材料が利用できたため,次年度に使用額が生じた。次年度使用額については,消耗品の購入に充てる計画である。
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