申請者は従来型グラスアイオノマーセメント(GIC)に多孔質球形ハイドロキシアパタイト(HApS)を添加することで、GICの機械的強度とフッ化物徐放量を同時に向上させることに成功し、この新規材料をアパタイトアイオノマーセメント(AIC)と命名、AICの化学的特性、各種口腔内細菌に対する影響などについて評価を行うことを目的としている。 基材のGICは作製するサンプルによって、充填用従来型GICであるFujiIX GP EXTRA(IX-Ex)、小窩裂溝填塞用従来型GICであるFuji IIIを予備実験により選別し、添加するHApSは平均粒径約20μmのものを用いた。 当該年度は、Fuji IIIを基材としたAICのフッ化物イオン溶出量と崩壊率の変化、またStreptococcus mutans(S.mutans.)に対する抗菌性の検討を行った。その結果、フッ化物イオン溶出量と崩壊率はどちらもAICが有意に高く、抗菌性に関してはAICが有意に抗菌効果が高かった。 またさらに、IX-Exを基材とし、GICと化学的な反応を示さない粉末状セルロースナノファイバー(CNF)を添加することによる特性の変化についても検証した。予備実験にて練和可能で安定した結果が得られる至適な粉液比と添加率の検証を行い、粉液比2.5、総粉末量の3~5%のCNFを添加し、3点曲げ強さ、圧縮強さの測定を行った。その結果、練和28日後の結果、圧縮強度を低下させることなく、3点曲げ強さが有意に向上した。以上の結果より、CNFを添加すると主に機械的強度の向上がみられるが、AICは化学的反応により機械的強度および機能的特性の向上がみられたことが示唆された。
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