研究課題/領域番号 |
17K17204
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
陳 鵬 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特任助教 (70708388)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / バイオマテリアル / インプラント材 / インテリジェント界面 / チタン / ヒト間葉系幹細胞 / フェムト秒レーザー / ナノ表面トポグラフィー |
研究実績の概要 |
最近インプラント治療を受ける方が急速に増えている傾向にある。チタン(Ti)やTi合金は機械的性質並びに耐食性に優れていることから,現在インプラント材料として最も使用されている生体材料の一種である。しかしながら,生体適合性Tiであっても生体活性・機能を持たない。Tiに対して新機能を付加することが必要である。生体機能向上の方法の一つとして,Ti上の骨形成はTiの表面形貌が起因している可能性があることが知られていることから,本研究では、次世代向けインプラント、新生骨再生の促進をできるTi基インテリジェント界面の創出、特にヒト間葉系幹細胞の形態を制御がある、同時にインプラント材周辺の新生骨の再生を促進できる効果的に表面デザインの開発を目的とする。 本年度は、細胞形態を制御できる最適な表面デザインを探索するために、波長775nmのフェムト秒レーザーにより形成した等方性・異方性周期的微細構造がヒト間葉系幹細胞(hMSCs)の接着挙動およびhMSCsの様々な細胞への分化にどのような影響を評価に着手した。表面加工した微細構造より細胞形態の制御を探索するために、倒立型蛍光顕微鏡でTi表面上での細胞の伸展状態を観察し、画像解析ソフトウェア(ImageJ)による細胞の接着挙動解析でき、ミクロンメートル/ナノメートルスケール(hybrid)の周期的な等方的な構造が最も優れた細胞の接着制御を示すことが明らかとなった。分化誘導培地を使用し、骨芽細胞への分化、軟骨細胞へ分化、脂肪細胞への分化など誘導した。各分化に関するバイオマーカーをリアルタイムRT-PCRで細胞遺伝子発現の測定および免疫蛍光染色で各分化関しているタンパク質発現の評価を可能とする測定系の構築を行い、現象の解明を進めている。さらに、マウスの前骨芽細胞の骨への分化促進について、hybridが最も優れた硬組織適合性を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ヒト間葉系幹細胞(hMSCs)の接着制御と分化促進できる最適な表面パターンを探索するために、周期的微細構造よる細胞接着挙動の評価を可能とする測定系の構築を行い、金属基盤表面と幹細胞の相互作用を最適化することにより、生物活性を有するインプラント材の表面設計・開発を進めています。また、生体機能発現メカニズムに関しても、フェムト秒レーザー表面加工したTi表面微細構造による細胞の接着制御、hMSCsの骨芽細胞への分化と軟骨細胞への分化と神経細胞への分化促進、マウス骨芽細胞の新生骨組織の生成などを実証しており、研究は当初の計画通りに進展している。 さらに、本年度得られた結果が学術的に価値の高いものであることが認められたため、国内外の学会発表(7件)や論文投稿(2件)や外国特許出願(1件)を通じて成果の発信を行った。今年度の達成度は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、前年度の研究を継続し、最適な骨形成を促進できる表面デザインの探索、およびTi表面上での等方性・異方性周期的微細構造よりヒト間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化促進と新生骨組織の再生挙動などのメカニズムの解明の研究を継続することとする。得られた結果をさらに有効なレーザー表面加工技術・条件へとフィードバックする。具体的には、以下の項目に細分化された項目について、次年度に引き続き研究を継続する。 (1)周期的微細構造のスケール(マイクロメートルスケールまたはナノメートルスケール)と細胞接着性の関係を明らかにする。また、接着のメカニズムを探索する。 (2)最適な骨形成を促進できる表面デザインを獲得のために、等方性・異方性周期的微細構造Ti試料の上でヒト間葉系幹細胞およびマウス骨芽細胞を骨へ分化誘導する。細胞よりmRNAを抽出して、前年度決めました骨再生関するバイオマーカーを使用し、細胞内の遺伝子発現の変動を測定結果による遺伝子のエピジェネティックな制御機構の解明に着手する。さらに、細胞におけるALP活性と石灰化による骨再生関するタンパク質発現量解析による評価を行い、硬組織適合性獲得とその機構解明を行う。 これらの結果を基に、次年度の研究計画を策定する。また、研究の得られた成果は、国内外の学会における講演および学会誌への論文投稿により逐次公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度に値段が高い消耗品の購入の予定であった、Ti試料表面上でのヒト間葉系幹細胞内の遺伝子発現の変化を解析するためのフローサイトメトリー(flow cytometers、FCM)用アッセイキットの購入を見送ったため。 (使用計画) 平成30年度の研究費には、当初の計画通りに実験を行うための消耗品の購入や、周辺研究の調査や研究成果の発表を目的とした国内外の学会参加旅費および登録費を計上する。さらに、平成30年度は、大量データ収集の効率化のため、多チャンネル同時測定を可能とするフローサイトメトリー法の導入を予定している。高精度かつ高速で幹細胞の分化挙動の評価のため、免疫染色により分化マーカーを光学的に測定するためのフローサイトメトリーの解析を検討する。必要なFlow Cytometry設備を既に有しており、設備は購入しないが、FCMアッセイキットの購入する必要がある。また、国内外での学会発表のための参加登録費・旅費、および学術雑誌へ論文投稿する費用に充当する予定である。
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