研究課題/領域番号 |
17K17210
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
緒方 謙一 九州大学, 大学病院, 医員 (30778858)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / 液性因子 |
研究実績の概要 |
1.ヒト歯髄幹細胞培養上清に含まれる液性因子群の同定 ヒト歯髄幹細胞(DPSC)はLonza社より購入したものを使用した。DPSCはLonza社が推奨したプロトコール通りに培養した。8割コンフルエントに培養後、培地を無血清培地に交換して48時間培養した。培養上清を0.22 μmのフィルターを通して細胞や壊死片を除去して、液性因子群として実験に使用した。DPSCが分泌する液性因子群にどのような液性因子が含まれているのかをサイトカインアレイ(Quantibody human cytokine array 6000; RayBiotech社)を使用して網羅的に検索した。比較対象として、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BMMSC; Lonza社より購入)の液性因子群を使用した。 DPSCの培養上清中に液性因子群は数百種類を超えるサイトカインやケモカインが含まれていることがサイトカインアレイより分かった。特に、DPSCの液性因子群にはBMMSCの液性因子群と比較して、抗炎症作用に関わる因子がより多く含まれていることが分かった。FollistatinやInterleukin-10、Transforming growth factor β(TGF-β1)はBMMSCより100倍以上含まれていた。また、幹細胞の遊走に関わる因子であるstromal cell-derived factor 1(SDF-1)や血管新生に関わる因子であるVascular endothelial growth factor(VEGF)は10倍以上含まれていることが分かった。DPSC固有の因子としては、Hepatocyte growth factor(HGF)やSiglec-9、Brain-derived neurotrophic factor(BDNF)があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験計画が遅れた最大の理由の一つは、当初実験計画としてヒト脱落乳歯歯髄幹細胞を使用予定であったが、国内外を検索したが、製品ベースで乳歯歯髄幹細胞が販売していなかったことが挙げられる。今後全国に普及させるためには製品ベースであることは必須であると考えているため、すでに製品として販売しており、かつ同じ効果が得られているヒト歯髄幹細胞に切り替えて今後の実験を進めていくことにした。その他、下記のような事項もあり、やや当初より研究計画が滞っている。 1. DPSCおよびBMMSCのバリデーションに時間がかかったこと。 2. サイトカインアレイの内容選定に時間がかかったこと。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroにおいて、動物の唾液腺上皮細胞を分離・培養し、放射線を照射した後、通常培地で培養した細胞を使用した培養した細胞とDPSCの液性因子群を作用させた細胞において、抗炎症作用を調べるための炎症性サイトカインの測定、ブロモデオキシウリジンを用いた細胞増殖能試験や抗炎症や細胞増殖に関連する遺伝子に関してリアルタイムPCRを行い評価を行う予定である。 また、in vivoでも放射線性唾液腺障害動物モデルの確立もしくは、同じ唾液腺疾患であるシェーグレン症候群動物モデル購入し、唾液量の確認やH-E染色等で組織学的に確認する。その後、培養上清を作用させて病態が改善するかどうか形態学的・組織学的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitroの実験まで及ばなかったため、その器材・培地・アッセキキットの購入をしていないため。
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