申請者らは骨の無機組成が炭酸アパタイトであることに着目し、前駆体を用いた溶解析出反応による炭酸アパタイトの調製法を確立した。炭酸アパタイトが破骨細胞に吸収され、骨リモデリングに調和して骨に置換される原因はアパタイトに炭酸基が存在し、破骨細胞が形成する弱酸性環境において溶解度が高いためであると考えられるが、炭酸アパタイト中の炭酸基含有量が、炭酸アパタイトの破骨細胞性吸収に及ぼす影響は検討されていない。 申請者は前年度までに炭酸アパタイトブロック中の炭酸基含有量を制御する方法を確立したため、実際に生体内で炭酸基組成が炭酸アパタイトの骨置換速度に影響を及ぼすか検討する必要性があった。そのため、本年度は確立した作成方法で、動物実験用試料として異なる炭酸基量を持つ炭酸アパタイト顆粒(サイズ200-300μm)の調製を行ない、試料の同定を行った。調整した試料が異なる炭酸基量をもつ炭酸アパタイトであることを確認したのち、ラット頭蓋骨に直径6mm、高さ2mmの骨欠損を歯科用エンジンおよびトレフィンバーにて作成し、調製した炭酸アパタイト顆粒(炭酸量6%、10%、14%)で再建を行った。埋入1、3か月後に頭蓋骨及び周囲組織をとりだし、固定を行った。標本は マイクロCTにて立体的な骨の形成および炭酸アパタイト顆粒の骨置換状態の評価を行った。分析の結果、埋入1か月ではサンプル間に顕著な差はみられなかったが、3ヵ月後において、すべてのサンプルにおいて顆粒が吸収され、顆粒方向に新生骨が伸びている像が見られ、またそれは炭酸量が多いサンプルほど顕著であることが認められた。
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