研究課題/領域番号 |
17K17223
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
豊村 順子 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (80645630)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯の再生 |
研究実績の概要 |
臨床で入手可能な細胞を使い、マウス腹腔内で正常構造の歯周組織を含む歯冠・歯根のユニットの形成を可能にした。 ヒト歯髄細胞、ヒト歯根膜細胞とヒトマラッセ上皮遺残細胞、または、マラッセ上皮遺残細胞が多く分離しやすいブタマラッセ上皮遺残細胞を用い、これらの細胞の組み合わせで歯・歯周組織のユニットの構造を確認した。しかし、再現性が乏しいという問題点がある。そこで再現性を高めるために、再度移植に用いる細胞の選定を行うことにした。歯髄細胞は象牙芽細胞に分化しやすい能力をもつ細胞を、マラッセ上皮遺残細胞はエナメル芽細胞に分化しやすい能力を持つ細胞の選定を行った。 マラッセ上皮遺残細胞を歯髄細胞の上清やインサートを用いて歯髄細胞と非接触的に培養を行い、マラッセ上皮遺残細胞がエナメル芽細胞に誘導されエナメルの石灰化をアリザリン染色で確認できることはわかっている。どの細胞の組み合わせで石灰化が起こるか確認中である。 また、歯髄細胞とマラッセ上皮遺残細胞の相互作用が視覚的に確認できれば、そこから細胞の選定に必要な情報が得られるのではないかと考え、3次元培養を行った。コラーゲンと歯髄細胞を混合しクローニングシリンダーの中に入れ固め、その上にマラッセ上皮遺残細胞をのせ共培養し、歯髄細胞とマラッセ上皮遺残細胞の間で形態的変化が見られないか確認した。共培養したところ、マラッセ上皮遺残細胞は分泌前期エナメル芽細胞様の円柱状の細胞が見られたが、マラッセ上皮遺残細胞と歯髄細胞の境に象牙芽細胞様の突起長い細胞は見られなかった。歯と歯周組織の形成には上皮・間葉相互作用が必須であると考えられるため、マラッセ上皮遺残細胞と歯髄細胞の接着を密にする方法の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究機関の移動により、研究室の立ち上げなどで研究が実施できない期間があったため。 また、歯冠を形成しやすいマラッセ上皮遺残細胞と歯髄細胞の選定に時間がかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
歯冠を形成しやすい細胞(象牙芽細胞に分化しやすい能力を持つ歯髄細胞やエナメル芽細胞に分化しやすい能力を持つマラッセ上皮遺残細胞)の選定を引き続き行う。 コラーゲンと歯髄細胞を混合したのち37℃で固め、上皮細胞と間葉細胞を密に接着させるため基底膜の構成成分であるラミニンでコートするなどして、その上にマラッセ上皮遺残細胞をのせ共培養し、歯髄細胞とマラッセ上皮遺残細胞の間で形態的変化がないか確認する。また、マラッセ上皮遺残細胞を歯髄細胞の上清やインサートを用いて歯髄細胞と非接触的に培養を行い、マラッセ上皮遺残細胞で石灰化を確認する。 次に、上記のいずれかで形態変化が確認された細胞を使い、スキッドマウスの腹腔内に移植する。また、灌流培養装置を用いてin vitroで、歯冠もしくは歯髄細胞とマラッセ上皮遺残細胞に加え歯根膜細胞シートを用いて正常構造の歯周組織を含む歯のユニットの形成を行い、組織解析を行う。また、変化のない細胞も用いて同様に実験を行い、組織解析を行う。 再現性よく歯冠もしくは歯周組織を含む歯のユニットの形成を可能にできれば、どのように再生されているか経時変化を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究機関の移動により、研究室の立ち上げなどで研究が実施でできない期間があったため、今年度に予定していた細胞の選定による解析や実験予定だった動物実験などにおける実験動物や組織解析に必要な試薬などを購入する予定にしていたが、実験が次年度に伸びたため次年度使用額が生じた。 (使用計画) 動物実験における実験動物やin vivoやin vitroにおける組織解析に必要な試薬の購入や細胞培養における培養液関係の試薬、ピペットやシャーレなどの培養消耗器具の購入に使用する。
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